ソプラノ・ヴォイスによるアルバム「時」の発売後、2004年12月にクリスマスにちなんだコンサートへ4回出演している。これらのプログラムには、「時」の中から数曲が選択されていた。「時」は生前最後のアルバムであり、1992年の「ミス・サイゴン」以来、私淑してきた岩谷時子さんへのトリビュートという側面もあったようだ。

日本語詞を4作品に書く

2枚目にして最後のクラシック・アルバム<br />「時」を発売、ライブも激増(2004年)アルバム「時」(日本コロムビア)

 前作「AVE MARIA」(連載第20回)から1年半後の発売である。この間の事情をファンクラブの会報にこう書いていた。

 「Newアルバム『時』が発売になりました。制作期間が、こだわり続け1年以上になってしまい、みなさんの手に届くのが遅くなって本当にごめんなさい!! でもその分、私とスタッフの愛情がいっぱいつまったアルバムになりました!! 今回も前作品の『アヴェ・マリア』と同じ、サウンドプロデュースに井上鑑さん、そして、作詞岩谷時子先生、私本田美奈子、そして、初参加である演劇界で有名な青井陽治先生が参加してくださり、より素晴らしいアルバムが誕生したと思います」(本田美奈子「Blue Spring Club」2004年12月号)

 日本語詞を提供したのは、本田美奈子さんと岩谷時子さんがそれぞれ4作品、青井陽治さんが3作品となっている。伴奏はピアノ(キーボード)、チェロやヴァイオリンなどの弦のアンサンブルによる。

 青井陽治さん(1948-)は劇団四季を経て1976年よりフリーで活躍している演出家、劇作家、作詞家、訳詞家である。スタンリー・グリーン著『ブロードウェイ・ミュージカルfrom 1866 to 1985』(ヤマハ音楽振興会、1988)の訳者でもあり、筆者はこの本を資料として頻繁に紐解いている。

 「Newアルバム『時』の発売は11/25です。この日は、私の可愛いめいっ子の誕生日でもありますが、私の恩師、渋谷森久先生の命日でもあります。渋谷先生のお墓には岩谷先生の字で『音』と書いてあります。渋谷先生にもアルバム『ジャンクション』シングル『つばさ』その他を通して、沢山の事を教わりました。アルバム『時』を持ち、渋谷先生のお墓参りに行って、1曲1曲聞いて頂き、色んな報告をしたいと思います。アルバムのタイトル『時』は、岩谷時子先生の“時”を頂きました。大切に…大切に…歌い続けて行きたいと思います。(略)私が歌い続ける意味を今見つけました!! そうです。歌を通して太陽になる事!! とても難しい事だと思いますが、太陽の様にみなさんに光を与え続けられるように頑張りたいと思います。心を込めて…」(本田美奈子、前掲誌)

 アルバム「Junction」(1994)のプロデューサー渋谷森久さんについて、そして実際に京都の渋谷さんの墓前で発売日の翌日にCDをかけて報告した様子は連載第8回に書いた。