論理的な考察力や分析力、実験における作業の協調性、チーム研究におけるリーダーシップの資質などが育成されることから、自然科学にとどまらず、広い分野での活躍が期待されている理工系の人材。理工系人気の背景と学生たちを支える環境について、日本物理学会 キャリア支援センター長である栗本猛教授に聞いた。

 理工系の人材の資質として挙げられる点は何か? 日本物理学会キャリア支援センターがまとめた調査では、大きく三つ挙げられます。一つ目は、物事を筋道立てて論理的に考察することができる点。言葉を換えれば、物事を考える力であり、理詰めで分析する力であり、課題を解決する能力のこと。理工系は積み重ねの学問であり、日々の研究活動を通じて、いわゆる「地頭」が自然に身に付いていくのです。

他人と協力し
研究を進める

 二つ目は、他人と協力しながら研究や作業を進めることができる点。理工系というと孤独な研究作業というイメージがありますが、それは昔の話。今、研究室ではチームを組んで実験を行うのが当たり前で、理論物理学でもグループでディスカッションをしながら研究を進めます。例えば昨年、ヒッグス粒子の発見のニュースがありましたが、そのプロジェクトには、世界中から集まった千人規模の研究者が関わっています。

 三つ目は、自分の考えを他の人にわかりやすく話をしたり書いたりすることができる点。研究室でのコミュニケーション能力とは、要するに研究に必要な情報を交換し合える能力。そのために、語学を含め自分の考えをわかりやすく伝える訓練ができています。

 これらの資質は、企業が求めている「問題解決能力」や「柔軟な思考力」、話し合いを通してプロジェクトを運営してゆく「リーダーシップ」と合致します。今理工系の人材の進路が多様化し、活躍の場が広がっているのも、こうした背景があると思います。