前年度は過去最高益だが
積立金の取り崩しが続くGPIF

 はじめに、GPIFのホームページから、「【参考資料】年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の変更」と題する、公的年金資産の運用検討資料をダウンロードしてみてほしい。

 先般の公的年金の運用方針の変更を決めた検討過程で、使われた資料だ。いくらか探しにくい場所にあるが、ホームページに載っている。これが、今回の拙稿で取り上げる話題の中心だ。

 厚生年金と国民年金の積立金は、通称「GPIF」こと年金積立金管理運用独立行政法人によって運用されている。GPIFはざっと120兆円の資産を運用する世界最大級の機関投資家だ。

 日本の公的年金は、確定給付の企業年金のように、個々の加入者の将来給付に必要な積立金が確保されている積立方式ではなく、現役世代の年金加入者から集めた年金保険料を受給者世代に支払う賦課方式だが、賦課方式のわりには大きな積立金を持っていて、積立金が一種の余裕として機能するのと同時に、積立金の運用益を年金財政に活用しようとしている。

 さて、この積立金の運用は、2012年度(2013年3月末が年度末)にあって、アベノミクスの金融緩和による円安と株価上昇の効果で、約11兆2000億円の利益が出た。利回りは10.23%であり、これは、公的年金の積立金が独立して運用されるようになった2001年以降の最高記録だ。慶賀の至りである。

 しかし、2012年度には4.3兆円が年金の支払いに充てるために取り崩され、運用資産額の純増は約7兆円に止まる。今後、しばらく積立金の取り崩しは続くし、運用が常に昨年度のように好調なわけではない。昨年の好結果を喜ぶとしても、「安心」にはほど遠いように思われる。