改憲派と護憲派が改正反対でタッグ
今、なぜ「憲法論議」が熱いのか

参院選の真の焦点「憲法改正」は、光か闇か?<br />あなたの一票で様変わりする日本人の暮らしと価値観日本の現行憲法である「日本国憲法」。1946年公布、1947年施行。本文は11章103条からなる。一度も改正されたことがない Photo:ロイター/アフロ

「自民党の日本国憲法改正草案は、『憲法とは何か』ということが実は全くわかってない人々が好き勝手に書いた、恐ろしい代物です。これでは改正ではなく、改悪。国民には、憲法改正の意義をきちんと知らせなくてはいけません」

 雨のそぼ降る6月26日の夕刻、東京都千代田区の研修宿泊施設・アルカディア市ヶ谷の大会議室には、こんな喚声が響き渡った。東京3弁護士会の有志が主催する「いま、立憲主義について考える会」という憲法シンポジウムの1コマである。来る参院選の公約に憲法改正を盛り込んだ自民党の改正案に異を唱える識者が一堂に会し、憲法改正について議論を深めるという場だ。

 檀上で憲法論議を交わしているのは、「改憲派」の代表的な論客である慶應義塾大学法学部の小林節教授と、「護憲派」の論客として知られる伊藤真弁護士の2人。これは、よくよく考えると少し不思議な光景である。改憲派と護憲派、本来であれば真っ向から意見が対立するはずの論者2人が、「自民党の憲法改正に立ち向かおう」とエールを送りあっているのだから。

 実は、小林教授の立場は「改憲派」と言っても「護憲的改憲派」。つまり、日本国憲法のよい部分は堅持し、一方で現状にそぐわなくなった部分は改正すべき、というスタンスである。小林教授によれば、「今回の自民党案の多くは、憲法学者の立場から見てリスクが大きい。だから改正を認めるわけにはいかない」というのである。これまでも小林教授は、数々の場で憲法改正の正しい考え方について持論を述べて来た。護憲派の伊藤弁護士とも、同じ考え方で意気投合したようだ。

 シンポジウムには、他にも自民党案に異を唱える民主党の鈴木寛参議院議員(元文部科学副大臣)が遅れて参加。3人の熱い議論に相槌を打つファシリテータは、経営ストラテジストで作家の坂之上洋子氏だ。1時間30分に渡るシンポジウムには多くの聴衆が訪れ、壇上の識者が繰り広げる憲法論議に熱心に耳を傾けた。シンポジウムは、さながら大同団結による「自民党憲法改正反対の決起集会」といった様子だった。

 国民に近いようで遠かった憲法論議が、今熱を帯びている。かねてより「日本国憲法改正」を持論として唱えてきた安倍晋三首相は、昨年末に第二次内閣を組閣後、憲法改正を声高に唱え始めた。こうしたなか、自民党が昨年4月に公表した『日本国憲法改正草案』を巡って、憲法学者や政治家から賛否両論が寄せられることとなった。