東日本大震災の大津波で、児童・教職員の計84人が、死亡・行方不明となっている大川小学校の事故検証が進められている。事故検証委員会(委員長:室﨑益輝 神戸大名誉教授)は7月19日、石巻市教育委員会の境教育長らに事故検証の「中間取りまとめ」を提出した。そしてこの翌日の20日、文科省と県の教育委員会、検証委事務局による「遺族向け報告会」が、石巻市内で開かれた。

 検証委事務局らによる遺族向けの報告会は、これまでも検証委会合ごとに持たれていたが、今回は検証委員と調査委員の8人も加わり、約30人の遺族と、事実上初めて意見を交わす場になった。報告会で遺族から上がったのは、検証内容や検証の進め方などに関する、非常に厳しい意見だった。なかには、委員の解任を求める声も出された。

「大川小学校付近」とは?堤防の高さは?
曖昧すぎる言葉の定義と検証方法

 報告会はメディアには非公開のため、遺族提供の音声からのやりとりを、以下に紹介する。

「色々取り組んでいただいたと思うが、検証委員会にとっては4ヵ月だが、遺族にとっては2年4ヵ月。率直に言わせてもらうと、『中間』という言葉としてはどうかな? と思った。……(この内容は)私たちは1年以上前に指摘したことであって、その先を調べていただきたい」

 冒頭でまず、検証を求めてきた遺族の1人が、中間取りまとめへの全体的な感想を述べた。検証の進捗については、過去2回の検証委会合を受けて遺族たちが心配を募らせていた通り、「遅い」という感想のようだ。

 続いて、遺族の1人ひとりが、検証としてまとめられた内容に対して疑問に思うことを、細かく踏み込んで質問していった。

 中間取りまとめ案の話し合いについては、前回にも紹介したが、報告会では、大川小学校付近への津波到達時刻の推算した大橋智樹調査委員(宮城学院女子大学教授/応用認知心理学等)と、過去の教職員へのアンケートをまとめた数見隆生委員への意見が集中していた。

 なかでも、大橋委員に対しては、科学的に論じていく上で本来必要な、基本的な言葉の定義や、定量的な認識が欠けているのではないかと、繰り返し指摘を受けた。例えばこんなやりとりだ。

遺族 「津波の来襲状況と到達時刻について。調査したのは首藤(筆者注:伸夫委員 東北大名誉教/津波工学)さんですか?」 

大橋 「私が担当です」

遺族 「大川小学校付近てどの辺? あまりにもアバウトすぎる」