「あなたには、1円玉がどんな形に見えますか?」――常識的な社会人生活、仕事人生活を送っていると、知識や常識が邪魔をする「頭でっかちな秀才・凡人」になりがちなもの。「鉈タイプ・ナイフタイプ」という概念、スティーブ・ジョブズが本当は何がすごいのか、など、目からウロコの公開授業、第三回。

あなたは鉈タイプ?  ナイフタイプ?

 わたしはいつも「研究者には2つのタイプがある」と語っています。
 ひとつは、大きな鉈を手にした研究者です。未開のジャングルにひとり潜入し、道なき道をガンガン切り拓いていくタイプですね。手にしている道具は大きな鉈一本ですから、細かな作業はできません。この人に課せられた役割は、多少荒削りでもいいから道を拓いていくことです。

 もうひとつのタイプは、ナイフを手にした研究者です。先駆者が鉈によって切り拓いた道に入り、乱雑な道をナイフできれいに整えていく。鉈のように大きな枝を切り倒すことはできませんが、道を整えていくには欠かせない人たちです。

 ひょっとすると、仕事でも同じような役割があるのかもしれません。「ここにビジネスチャンスがある!」と察知して、持ち前の行動力で新規の顧客を開拓していく人。そして上司や先輩が開拓した顧客に対して、細かいフォローをしてより深い関係を築いていく人。どちらが欠けても、仕事は成立しないでしょう。

 わたしの見たところ、いまの日本には後者のような、ナイフの使い方に長けた器用な人材は大勢います。しかし、鉈を手にして道を切り拓くタイプの大胆な人材が圧倒的に欠けている。比率として、10人のうち9人はナイフでもかまいません。でも1人くらい、せめて全体の1割くらいは、鉈の使える人材が必要なのです。