細野ひで晃<br />外側から見続けた日本を広告する
写真 加藤昌人

 床運動の競技やバードウオッチングのさなかに鳴ってしまうケータイの「着うた」、国境を描くように、大地に整然と並べられた「カップヌードル」、本物の富士山を急滑降するジェットコースター「FUJIYAMA」――。あくが強く、メッセージ性の高い、数々のヒットCMを手がけてきた。

 商社マンの父を持ち、旧西ドイツで生まれ、イランの日本人小学校に進むが、イラン・イラク戦争の勃発で帰国。高校時代は単身米ボストンで過ごした。「英語がうまくしゃべれなくて、友だちができず、一人美術室で舞妓の絵を描いていたら、同級生たちが見つけ、天才だとほめてくれた。そこから絵がコミュニケーションのツールになった」。卒業後の進路を動画に決めると、ハリウッドのスター監督を輩出したロサンゼルスの名門校で学んだ。名プロデューサーの奥山和由に抜てきされ、24歳で映画初監督を務めるが、奥山の松竹退社とともにお蔵入り。一転CMの世界に飛び込んだ。

 「固定観念を崩して未来を考え、そこから逆算した現在を見せるのがディレクターの仕事」。外側から見続けてきた日本だからこそ、日本、そして日本人を広告することにこだわる。ナショナリズムについて、腑に落ちる定義を求め続けているように映る。

 今、仕掛けているのは、男と女、相方の母性への回帰。「おばハニー」と名づけられた中年女性のキャラクターは、片足を大きく未来に向かって踏み出している。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 遠藤典子)

細野ひで晃(Hideaki Hosono)●CMディレクター 1973年生まれ。1997年松竹シネマジャパネスクの一本「ア・ルースボーイ」で映画初監督。電通テックに入社、数々のCMを手がけ、受賞多数。2004年THE DIRECTORS GUILD結成。2006年DAYTORA ENTERTAINMENT設立。