前回、つぎのように述べた。第一に、国際収支上の「その他投資」(および「誤差脱漏」)は、円キャリー取引の動向を示すものと解釈できる。第二に、その動きによって為替レートの動向が説明できる(少なくとも、そう考えて矛盾しない)。すなわち、これらが流出になれば円安が進行し、流入になれば円高が進行する。

 今回は、このことをもう少し長い時間幅で確かめてみよう。そして、これが持つ政策的・理論的含意について考えることとする。

 まず、為替レートの変動を見ると、つぎのとおりだ。

 実質実効為替レートは、2000年以降、ほぼ一貫して円安方向に動いた。しかし、名目円ドルレートを見ると、つぎの4つの時期に明確に区別できる(【図表1】参照)。

【図表1】名目為替レートの推移(円ドル、2000年1月~)
もはや「円安」は期待できないこれだけの理由

(1)2000~2002年頃まで円安に動いた(1ドル=100円程度から130円程度に)
(2)2002~2005年頃まで円高に動いた(1ドル=130円程度から110~105円程度に)
(3)2005~2007年まで円安に動いた(1ドル=105円程度から125円程度に)
(4)2007年夏以降に急激な円高が生じた。