9月に入ると夜はいくらか涼しくなっても、日中は8月と変わらぬ暑さがしばらく続きます。この時期は、真夏と同じようにナスやキュウリ、トマト、トウガン、トウモロコシなど体を冷やす涼性や寒性の食材を取り、体から熱を取り除くことを心がけましょう。

 長かった夏の間にかいた汗と共に「気」が失われているので、疲労が蓄積されていることでしょう。内臓も疲れ気味で、食べたものを消化し、栄養を吸収する力も低下しています。まずは、「脾(胃)」の働きを整えて気を養うことが先決です。穀類、芋類、鶏肉、牛肉など気を養うものを軟らかく煮るなどして、消化のいい調理法でいただくのがいいでしょう。

 今年の秋分は9月23日。中医学の陰陽学では、エネルギーが活発に働く「陽」と、静かに休息する「陰」が秋分を境に入れ替わると考えられています。つまり、エネルギーが活動する時期は過ぎ、徐々にエネルギーを温存する方向に向かうわけです。日々の食事についても、陰陽の動きに合わせることで体の調子を整えていきます。

 秋は夏に比べて乾燥する季節ですので、乾燥がひどくならないうちに体を潤す食材で養生します。「秋の臓」といわれる「肺」は、特に乾燥するのを嫌います。肺に通じる器官である鼻、喉などの不調、咳が出やすくなるなど、乾燥からくるトラブルや病気を未然に防ぎましょう。

 大根、レンコン、山芋、ナシ、白キクラゲ、白ゴマなどの白い食材は、体を潤す働きのものが多いのでお薦めです。特にナシは肺を潤す食材の代表で、咳止め効果もあります。生でいただいてもいいのですが、ナシと白キクラゲを軟らかくなるまで煮て、ハチミツで甘さをプラスしたものをデザートにしてはいかがでしょうか。

 また、栄養学的に粘膜を強くするのは、ビタミンAやカロテンです。色の濃い野菜や果物を意識的に取って、体の内側から強くしていきましょう。抵抗力が強くなり、風邪などの感染症にかかりにくくなります。

●お料理ヒント
お薦めは気を養う鶏肉とカロテン豊富なシュンギクとナシのごまあえ。蒸してほぐした鶏胸肉、千切りにしたナシ、シュンギクのおひたしを混ぜ、そこにすりゴマ、だし、醤油、ハチミツを混ぜたものを加えてよくあえます。菊の花のおひたしを加えると彩りもよく、食欲も増すこと請け合いです。