マネジメントは成果だけでは不十分 <br />“正統性”が必要であるダイヤモンド社刊
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「社会においてリーダー的な階層にあるということは、本来の機能を果たすだけではすまないということである。成果をあげるだけでは不十分である。正統性が要求される。社会から、正統なものとしてその存在を是認されなければならない」(『マネジメント──基本と原則[エッセンシャル版]』)

 企業、政府機関、非営利組織など、あらゆる組織にとって、本来の機能とは、社会のニーズを事業上の機会に転換することである。つまり、市場と個人のニーズ、消費者と従業員のニーズを予期し、識別し、満足させることである。

 さらに具体的にいうならば、それぞれの本業において最高の財・サービスを生み出し、そこに働く人たちに対し、生計の資にとどまらず、社会的な絆、位置、役割を与えることである。

 しかしドラッカーは、これらのものは、それぞれの組織にとって存在の理由ではあっても、活動を遂行するうえで必要とされる権限の根拠とはなりえないとする。神の子とはいえなくとも、少なくともどなたかのお子さんである貴重な存在たる人間に対し、ああせい、こうせいと言いえるだけの権限は与えないという。

 ここにおいて、存在の理由に加えて必要とされるものが、正統性である。「正統性とは曖昧なコンセプトである。厳密に定義することはできない。しかし、それは決定的に重要である」。

 かつて権限は、腕力と血統を根拠として行使された。近くは、投票と試験と所有権を根拠として行使されている。

 しかしドラッカーは、マネジメントがその権限を行使するには、これらのものでは不足だという。

 社会と個人のニーズの充足において成果を上げることさえ、権限に正統性は与えない。一応、説明はしてくれる。だが、それだけでは不足である。腹の底から納得はされない。

 マネジメントの権限が認知されるには、所有権を超えた正統性、すなわち組織なるものの特質、すなわち人間の特質に基づく正統性が必要とされる。

「そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生かすことである。これが組織なるものの特質である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである」(『マネジメント[エッセンシャル版]』)