「らくらくホン」の成功に学べ!

 超高齢化社会に向けた「らくらくホン」と子供の安全性を最優先に考えた「キッズケータイ」いずれもNTTドコモの製品シリーズ名であるが、両シリーズは、日本のモバイル市場における一つの金字塔であると思っている。

 まずは「らくらくホン」だが、主に高齢者層をターゲットとした携帯電話端末シリーズとしてスタートした。ターゲットとしては携帯電話初心者も含まれていたようだが、基本は高齢の初心者ということだったと思う。

 建築物や乗り物などもそうだが、たとえば高齢者や身体障害者“だけ”が使いやすい設計やデザインというのはよくない。あくまでも万人が使いやすく、その中でもターゲットとなるユーザー層に喜ばれる、そうしたユニバーサルデザインが基本になくてはいけない。らくらくホンもmovaの時代からそれを基本に置いていた。その上で、特徴はどのようなものであったかと言うと、まず機能を絞り込んでシンプルにした。ディスプレイやキー(ボタン)の文字サイズを拡大し、ボタンの凹凸も少し大きくして押し間違いしにくいようにした。

 その上で、らくらくホンならではの機能を順次搭載した。たとえば、受話音量を調節するダイヤルスイッチや歩数計機能、はっきりボイス機能、ゆっくりボイス、さらに、メニューやメールなどの文章読み上げ機能。らくらくホンは基本的に富士通の開発製品であるが、このうちダイヤルスイッチ、文章読み上げ機能以外は富士通の他の携帯電話にも採用された。高齢者向けに開発した機能が、まさにユニバーサルな機能として、一般機種にもフィードバックされていったわけである。また読み上げ機能は、高齢者のみならず、視覚障害者のニーズにも応えることとなった。

 らくらくホンは1999年、初代は当時の松下通信工業によって開発されたが、その後は富士通が請け負い、1年に一度モデルチェンジを繰り返してきた。そして「docomoらくらくホン」から「ドコモらくらくホン」とシリーズ名は微調整されたが、単独のシリーズとしてここまで来ている。とは言え、iモードへの対応やmovaからFOMAへの移行、カメラの搭載など、大きな流れは一般モデルと統一してきた。つまり、らくらくホンも多機能化されていったわけで、その後もスマートフォンに至るまで富士通製が基本路線で来ている。

課題先進国だからこそ、<br />グローバル市場を狙えるサービスが出てくる「ドコモらくらくホン」は現在5機種がラインナップされている。

 シニア層でもスマートフォンを望む声が多くなったと判断して、昨年、アンドロイド端末として初の「らくらくホン」が富士通製として発売された。ARROWSシリーズのARROWS Me F-11Dをベースにした「らくらくスマートフォンF-12D」である。

 ディスプレイサイズを拡大し、有効画素数もアップさせた。秀逸だったのは「らくらくタッチパネル」。これは、指が触れている間だけアイコンの色が変わるという機能だ。しかもその状態で押し込むと振動が指に伝わるので、誤動作が減る。さらに、「うっかりタッチサポート」や、押したい場所を自動補正する「おまかせタッチ」などの優れものの機能を搭載した。