羽田国際線の発着枠配分めぐり<br />対立深めるANA、JAL“最後のお願い”9月18日の記者会見で、「羽田の発着枠は均等に」と訴えるJALの植木義晴社長
Photo by Ayako Suga

 羽田空港の権益をめぐり、日本航空(JAL)とANAホールディングスの対立が激しさを増している。この夏以降、記者会見やインタビューなどで双方のトップがたびたび持論を展開、政治も巻き込み泥仕合の様相を示し始めている。

 対立の根幹にあるのが、新滑走路増設に伴って来年3月から1日当たり40枠増える羽田国際線の発着枠の配分だ。羽田は都心に近くて便利なため、航空会社にとって垂ぜんの的だ。中でも国際線は1枠で年間十数億円の利益をもたらすとされるドル箱だけに、国内の航空会社に割り当てられる20枠をめぐって、分捕り合戦が激しさを増している。具体的にはANAは20枠すべてを要望、JALは半分の10枠ずつ分けるよう主張するなどその溝は深い。

 ANAの言い分はこうだ。JALが公的支援を受けて業績を回復させたことから、競争環境が歪んだとし、「羽田の発着枠を格差是正の一つの手段として検討していただきたい」(伊東信一郎・ANAホールディングス社長)と訴える。実際、前期(2013年3月期)の当期利益は、JALが1716億円に対してANAが431億円と大差がついた。法人向けのビジネスクラス販売で、コスト競争力をつけたJALによる値下げ攻勢が激しくなったとみており、不満を倍加させている。

 一方のJALは、利用者利便を盾に取った。「羽田の発着枠は国民の重要な財産。利用者利便や経済効果を最大化するには、路線ごとに2社に均等に配分されること」(植木義晴・JAL社長)と主張。8月に発行した広報誌では、羽田の発着枠配分に関する説明を5ページにわたって展開。1社独占ではなく2社に均等に配分されてこそ、運賃、地方路線との乗り継ぎネットワーク、国際的なアライアンスとのバランスなどの観点から利用者の便益が最大化できると説明している。念押しとして、この冊子を、永田町やマスコミ、学識関係者など関係各所に配布して回っているほどだ。