世界初の酵素センサーを開発

 高度な技術と高額設備を必要とするバイオビジネスは、中小企業には不向き。そんな常識を覆して躍進を続けるのが、小型培養装置で国内トップシェアを誇るエイブル。大学や産業界のニーズに的確に応える製品を次々と生み出している。

 エイブルは、バイオ技術の研究・開発に欠かせない小型培養装置の国内市場で、推定40%のシェアを握るトップメーカーだ。培養装置は、培養液の温度や酸性度、酸素濃度などを制御し、発酵・培養に最適の環境をつくり出す装置で、大学や企業の研究機関などさまざまな分野で利用されている。

 同社はもともと石油類の物性分析に使う機械装置の下請け製造業だった。二代目社長の石川陽一氏が入社したのは1971年。自身は電気化学が専門で、それまではバイオとも機械とも縁が薄かった。バイオ分野に足を踏み入れたのは、大学時代の先輩に発酵用の酸素電極(酸素センサー)の開発を勧められたのがきっかけだ。

 微生物の発酵作用を維持するには、培養液の酸素濃度を一定以上に保つ必要がある。この濃度測定には酸素センサーが不可欠だが、事前に高温の蒸気で殺菌しなければならない。74年当時、世界には、この蒸気殺菌に耐えられるセンサーがなかった。しかし石川氏は、家業で学んだ機械の知識と大学のバイオ研究者たちの知識をフルに活用して、短期間で目的に見合うセンサーを作り上げた。

 酸素センサーで事業を軌道に乗せた同社は、その後、バイオ研究者からニーズを汲み上げながら、炭酸ガスセンサー、PHセンサー、バイオセンサー、アルコールセンサーなどを次々と開発。それに付随して計測器や制御装置も作り始める。

 そんななかから小型培養装置が生まれた。微生物の発酵作用や増殖を促進するには、培養液の酸素濃度や温度、圧力、酸性度などの条件を厳密に制御する必要がある。しかし従来、これらの制御は各種センサーや計測器単位で別々に行なわれていた。システムとして稼働させるには、後で人為的に組み合わせなければならなかった。