ようやく解消されたデフォルト懸念
米国の政治機能低下が招く波紋

 米国の債務上限問題は、予想通り期限ぎりぎりに与野党の合意が成立し、米国債はデフォルトを免れた。しかし、今回の合意は問題を数ヵ月先送りしただけで、根本的な問題の解決ではない。むしろ、来年1月以降、今回と同じことが起きるという危惧を増幅したと言えるかもしれない。

 ここ数週間に起きた米国での出来事を一言で要約すると、“米国の政治機能の低下”だろう。もともと政治の機能は、社会の中で様々な意見を集約することによって、国を最も有効な方向に誘導することだ。今回の米国のドタバタ劇を見ていると、その機能が明らかに低下している。

 オバマ大統領はひたすら“オバマケアー”に固執する一方、野党共和党の中の保守強硬派の“ティーパーティー”は、「自説を曲げて妥協するくらいなら、米国債をデフォルトにする方がマシ」との暴論を唱えた。その結果が、両者が時間ぎりぎりまでのチキンゲームを展開する結果となった。

 米国の政治機能の低下は、一時的に米国債の信用低下懸念を増幅しただけでは済まなかった。というのは、オバマ大統領はそれに時間をとられるあまり、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議を欠席することになった。

 オバマ大統領自身が反省しているように、同氏の欠席によって中国のアジアにおける相対的地位を大きく高めると同時に、親米諸国に対して重大な懸念を抱かせる結果になったからだ。

 オバマ大統領が先のAPEC首脳会談を欠席したことは、大きな失態と言うべきだろう。大統領の代理として会議に出席したケリー国務長官では、いかんせん存在感が不足している。大統領自らが出て行って、中国やロシア首脳と渡り合うことが必要だった。