アスベスト対策の「規制強化」とされる大気汚染防止法の改正案が国会で審議されていた6月上旬に、石川県加賀市で起こった「アスベスト飛散テロ」。加賀市内の5階建てビルの解体工事で、建物所有者でもある業者が、飛散事故の危険性を再三指摘されていながら、何の対策も講じずにアスベストを周囲に飛散させてしまった。それは、まさにテロ行為であった。その事件をめぐる第3報。現場の後片付け工事では、さらに驚くべきことが起こっていた。

「アスベスト飛散テロ」後の状況

 現場の後片付けをする工事で、石川県や石川労働局が通常必要とされる隔離養生をしなくてよいと指導する前代未聞の「行政主導の手抜き工事」により石川県発の「アスベスト規制破壊」が始まりつつあることを前回報告した

 後片付けの工事は、7月末の段階で足場組みなどが始まり、8月中旬には完了した。

「県内で数多くアスベスト除去を手がけている信頼できる業者です」

「労基と県が連携してしっかり指導監督するので心配ない」

 工事前に行政はそう説明していたのだが、結論からいってしまえば、後片付け工事の段階でも、再び飛散事故が起きた可能性がきわめて高い。以下、順を追って説明しよう。

 加賀市の中心市街地に位置する5階建てのビルが一連の事件の現場だ。周辺住民の指摘で現場に吹き付けアスベストがあることが指摘され、小松労働基準監督署に調査を指導されていたのだが、解体業者でもある建物所有者・毎日モータースの山本将光社長の指示で6月上旬、正式な報告前にアスベスト対策なしにこっそり吹き付け材の除去工事が始まった。

 そもそも吹き付け材にアスベストが含まれていないなら除去工事は必要ない。工事に気づいた住民は通報したが、行政はすぐには現場に行かなかった。小松労基が電話で工事を止めるよう指導したが、業者は無視した。県は電話指導すらしなかった。1週間近く経って、ようやく労基や県が現地に訪れたが、吹き付け材の除去はあらかた終わっていた。

 石川県が現場に残っていた吹き付け材を分析したところ、アスベストの含有が確認された。本来不要のはずの吹き付け材の除去を行政指導の最中にこっそりおこなったことから、実際には解体業者がアスベスト含有について知っていたことはまず間違いないだろう。アスベスト対策なしの除去作業によって、周辺にアスベストが飛散したわけだが、それは意図的に飛散させたもので、発がん物質を無差別にばらまくテロ行為にも等しい所業である。