約16億人――世界人口の約4分の1を占めるとされるイスラム教徒が存在感を強めている。まだまだ経済成長の余地が十分にあり、日本への観光客も急増中だ。例えば、アジアの中でもイスラム教徒が多いインドネシアとマレーシアからの来日者数は、今年8月だけで約2万7000人。前年比で35%増加している(日本政府観光局調べ)。有望市場としてのイスラム圏に、日本企業も熱い視線を注いでいる。

 外国を旅行するイスラム教徒につきものの悩みが「食」の問題。イスラム教といえば、厳しい戒律で知られ、豚肉や豚脂、アルコール飲料や調理用みりんなどが禁じられている。

 そこでイスラム圏で普及しているのが、「ハラル認証制度」だ。「ハラル」とはいわば、「イスラムが認定する適正な方法で処理・加工・保管・運搬された食品」であるという第三者機関のお墨付きだ。イスラム圏ではもちろんのこと、圏外でも彼らはハラル商品の購入を望んでおり、インドネシアでは「ハラル」か否かの確認ができるスマートフォンのアプリが人気だという。

 キユーピーや味の素などの日本企業は、厳しい条件をクリアしてハラル認証を受け、イスラム圏で事業を展開している。また、熊本県のゼンカイミートは、日本国内で初めてハラル認証された牛肉を扱うが、このバーベキューがイスラム教徒の人気を集めている。

食品だけでなく
化粧品にも「ハラル」認証

 また、イスラム圏からの観光客が増加しているホテルスプリングス幕張では、ハラル専用の食材やキッチンを揃えたところ、旅行会社などからの反響が大きいという。ハラル市場は食品だけで全世界で約60兆円規模と試算されており、今後もさらに注目が集まりそうだ。

 さらに、ハラルはいまや食品だけでない。資生堂は昨年、マレーシアの認証機関からハラル認証を受け、マレーシア国内でスキンケア商品の販売をスタートさせた。同様に、資生堂のインドネシア国内の化粧品市場規模(2012年)は約3000億円であり、年10%の伸び率を記録しているという。

 このように、国家経済の勢いそのままに、広がるイスラム圏のハラル市場。非イスラム国の企業が「ハラル認証制度」に積極的に取り組むことによって、国家間の垣根がさらに低くなり、イスラム教徒たちの国外でも活動はさらに活発になることだろう。

(田島 薫/5時から作家塾(R)