「金融庁を軽視していたなんてことはないでしょうね」。みずほ銀行の暴力団融資問題をめぐって、計5時間14分に及ぶ集中審議を実施した、衆議院の財務金融委員会。

 佐藤康博頭取が参考人として出席した午前の部で、焦点の一つとなったのは、金融庁への虚偽報告だった。

金融庁から擁護論が消えうせ <br />四面楚歌に陥ったみずほ銀行国会に呼ばれてもなお、みずほ銀行にはウミを出し切ろうとする姿勢が見えない(写真は佐藤康博頭取)
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 今回の問題でみずほ銀行は当初、金融庁に対して、暴力団融資に関する情報は「担当役員止まりになっていた」と報告。それが、行政処分を受けた後になって突然、歴代の経営トップも「知り得る立場にあった」と、説明を翻した経緯がある。

 自ら問題を大きくし、組織的な隠蔽すら疑われることになった虚偽報告は、行内で必要な資料の確認すらせずに「一担当者にすぎない行員の記憶のみに依拠して(金融庁に)回答した」(第三者委員会)ことが原因だ。

 あまりに非常識な当局対応によって、国会の場で委員から厳しい追及を受けたのだ。

 佐藤頭取は「金融庁検査への対応が非常に不十分だったことをあらためておわびしたい。軽視するようなことは考えていない」と力なく語った。ただ、なぜ担当者の記憶だけで報告書を作ることになったのかという根本の原因には、結局触れることはなかった。

追加処分に動く金融庁

 虚偽報告をめぐる不可解な点が、今になってもクリアにならない状況に、いら立ちを募らせているのは金融庁だ。一時は幹部の間で銀行を擁護する声もあったが、もはや全く聞こえなくなった。

 トップの関与を検査で見抜けず、当局自身が「甘い検査だ」と批判を浴びていることも、擁護論をかき消す要因となったが、ほかにも理由がある。

 金融庁は7月以降、銀行への検査・監督方針の見直しに動く中で、背景にある問題の一つに銀行側の「コンプラ疲れ」を挙げていた。金融商品の販売体制をはじめ、当局としてさまざまな規制を課すことで、銀行界から上がっていた不満の声に「かなり配慮した」(金融庁幹部)わけだ。