熱心な読者から「交渉術」について書いてほしいと頼まれた。

 彼は、交渉術をどうしたら身に付けられるか、悩んでいるという。その交渉術は、複雑だ。取引先との交渉ばかりではない。上司や部下との交渉も含まれるというのだ。

 上司、部下との交渉?要するに彼は、取引先や職場での人間関係に悩んでいるのだ。彼の悩みは、深く、「その上司がいるだけで胃が痛くなるんです」とか「部下がいうことを聞かない」などと愚痴った。

交渉術の根本にある「3G」

 彼の話を聞いた時、水滸伝の主人公、宋江の姿が浮かんだ。

 宋江こそ、最高の交渉術を持った人物ではないか?

 交渉術というのは、一言で言えば、相手を自分のテリトリーの中に入れてしまうことだ。そうすれば相手は、自分に従わざるを得ない。それは上司だろうと、部下だろうと、取引先だろうと、同じだ。みんな自分のテリトリーに入れてしまえばいい。その術を持ったのが、宋江なのだ。

 宋江は、仲間、敵、住民誰もから愛され、尊敬された。仲間は、彼のために命を捨て、敵は、彼に従い、仲間になった。住民たちは、彼の進む道を喜んで開けた。

 なぜそんなことができたのだろうか。その理由は、「3G」ではないかと考えた。すなわち「慈悲(G)」「仁(G)」「如(G)」の三つの言葉を並べて「3G」。「如」は(J)かもしれないが、まあ、(G)でいいだろう。なんとも安易な覚え方だが「3G」。慈悲は、慈しむこと、仁は誠を尽くすこと、如は許すこと。