今月は米国のヘッジファンドの人たちが大勢日本に来ましたが、彼らと面談すると異口同音に同じ質問をされました。それは、「安倍政権には改革はできないのか?」、「安倍政権は改革する気はないのか?」という質問です。

改革逆行法案のオンパレード

 確かに、今国会に提出されている法案を見るとそう思われても仕方ありません。確認のために改革から逆行している法案を整理すると、以下のとおりです。

①国家公務員制度改革法案

 幹部公務員の人事を新設される内閣人事局において政治主導で行なうという掛け声とは裏腹に、幹部公務員の身分保障が残されて降格人事が事実上不可能な中では、単に新しい局長ポストが増えるだけとなり、官僚の側にとっては痛くも痒くもない内容となっています。これでは改革は進みません。

②薬事法改正法案

 確かに一般医薬品の99%超のネット販売は解禁されましたが、その一方で厚労省は、例外の28品目については民間有識者の専門家会合で明示的な結論となっていないにも拘らずネット販売を禁止し、更に処方薬については民間有識者による検討もせずに勝手に省令で決められていたネット販売禁止を法律に格上げしました。官僚が暴走して規制強化できる悪しき前例となったと言っても過言ではありません。

③産業競争力強化法案

 経産省が過去に作った法律の焼き直しで、実際には何の効果もないと予想されますが、条文をよく読むと、民間の事業再編による生産性上昇の目標を政府が定め、かつ民間の事業分野が過剰供給構造にあるか、企業が作成した事業再編計画で過剰供給構造が解消できるかを、ビジネスをやったことがない政府の官僚が判断するという“過剰介入”をしようとしています。

 ついでに言えば、この法律とは関係ありませんが、経産省は経済団体や企業に赴いて賃上げを要請し、賃上げを実施しない企業の社名を公表する方針という報道もありました。民間の需給が適正かを政府が判断し、政府の言うことを聞かない企業の社名を公表するなんて、とても自由主義経済の国とは思えません。経産省は“国家資本主義”を超えて“国家社会主義”を目指していると思われても、仕方ないのではないでしょうか。