CSR(企業の社会的責任)の捉え方が変化しつつある。単なる寄付や社会貢献を超えて、社会的な課題への働きかけを意識する積極的なCSRに乗り出す企業が増えた。また、社会問題の解決と企業の利益を両立させるCSV(共有価値の創造)という新たな潮流も広がりつつある。その最新の動きを追った。

 企業の社会的責任を意味するCSRは、ともすれば定義や活動内容に曖昧な部分があった。

 例えば、企業活動に伴う​CO2の排出や自然・環境破壊などに対して、「植林」や「寄付」といった形で、利益の一部を社会に還元するといった活動が​CSR​と考えられてきた。

経営戦略の一環として
必要な中長期的視点

クレアン
CSV/シェアード・バリュー
コンサルタント
水上武彦

1966年、富山県生まれ。東京工業大学・同大学院修了。運輸省(現・国土交通省)、経営コンサルティング会社のアーサー・D・リトル勤務を経て、現職。著書に『CSV経営』(赤池学氏との共著)などがある。

 そのような“広報宣伝的”な利益の再分配に留まったCSRではなく、中長期的な視点に立って「社会・環境問題の解決と自社の利益」を両立させようという積極的なCSRが国内外で広がりつつある。

 同時に、「CSV(Creating Shared Value)」という言葉も聞かれるようになった。CSVは、2011年に米国のハーバード大学教授、マイケル・ポーター氏などが提唱した考え方だ。CSVは単なる社会貢献を超えた「経営戦略」だと定義される。環境や社会的課題の解決がそのまま自社の利益にもなり、それが引いては持続可能な社会の実現につながるというわけだ。

 CSRコンサルタントで『CSV経営』という共著書もある水上武彦氏は、近年の積極的なCSRやCSVを俯瞰して、「企業の競争力を高める」という目的がベースになっており、そのためには中長期の視点と強みを活かすことが必要という。

「海外では08年のリーマンショック、国内では11年の東日本大震災がきっかけとなり、CSRの再定義やCSVの導入につながったと思います。不況や災害に見舞われても活動を中断しないためには、その活動によって利益を上げ、継続できることが重要で、経営戦略の一環としてCSR、CSVを捉えなければなりません」

企業、または部署単位で
できることをやる

 本業の経営戦略としてCSVを位置づける際、自社の強みや技術、特性を活かした取り組みが求められる。CSVの具体的なフレームワークとしては、次図に示した3つのアプローチがある。