「多額の予算を注ぎ込んでも一向に収益が上がらないのです。どうしてでしょうか」

 こうした悩みを企業経営者からよく相談されます。たとえば、ネットを使ったビジネスの多くがその典型です。

 ホームページ構築に多額の費用をかけ、それなりにアクセスされるようになったものの、十分な広告費をとれるほどの水準には達しないというのも、無料の情報サイトが多数乱立する現状では当然といえるでしょう。

 また、通販メニューを設けても、決済方法が面倒、知名度がいま一つといった理由で、結局は売上げに結びつかない例もまだまだ多いようです。年配者の場合、商品品質とブランドイメージの両面で、ある程度自分が信頼でき、納得できないと、なかなか購入までに踏み切らない人が多いのです。こうした背景から、会員サイトのアクセス数が売上げに直接結びつかない一方、サイトの維持費用が継続的に必要となるため、思うように売上げが上がらない例が後を絶ちません。

お客は目の前にいるのに、
売上に結びつかない!

 一方、金融系企業が年配者向けに実施する無料の資産運用セミナーも同様です。無料であるがゆえに時間に余裕のある年配者で会場はたいてい満員となります。

 ところが、セミナー終了後に実際に金融商品の購入を申し込む人はあまり多くありません。参加者のなかに「無料なら情報だけはもらっておこう」という冷やかし客が多いためです。会場費、講師費、宣伝費などに多くの費用と手間をかけても、歩留まりが少ないので、なかなか収益に直結せず、主催企業にとっては頭痛のタネです。

 そんな中、注目したいのがいわば「連結連鎖型」のビジネスモデルです。アメリカの大リーグやディズニーランドなどのテーマパークに代表される「屋外エンターテインメント」、カフェやショップ、レストランをそなえた「大規模美術館」、1冊本を選ぶと、関連ジャンルの推薦本リストを自動的に紹介してくれるネット通販「アマゾン」などは、みな「連結連鎖型」のビジネスモデルです。こういった場所では、1人の「来店客」が落とすお金が、入場料(「アマゾン」なら、その人がサイトを訪れた当初の予算)の何倍にもなっているのです。

1つの消費行動が
次の消費行動を促す

 この理由の1つは、1つの消費行動が、次の消費行動の意欲を喚起するような商品・サービスの体系になっているためです。こうした消費意欲が「連鎖的」に喚起されやすい構造だと、来店者の消費行動が継続しやすくなります。

 もう1つの理由は、来店者がその店にいる「滞在時間」が長くなるような商品・サービスの構造となっているためです。

 これらの結果、たとえ入場料収入での収益が少なくても、来店者が買い物をする個々の場面を「連結」してみると、かなりの収益になっているのです。