プロ野球球団と選手の
「契約」はどう変わってきたか

 2013年のプロ野球界を席巻した田中将大投手(東北楽天)は、来シーズン日米どちらのマウンドに立つのか。その去就のカギとなっているのはポスティング制度だが、この制度について考察するには、プロ野球における選手契約の変遷をおさらいしておかなければならない。

 かつて、プロ野球球団は自由競争の下で選手を獲得していた。つまり、選手は勧誘してきた中から好きな球団と契約することができた。しかし、入団契約後の保有権は球団にあり、10年にわたって同一球団でプレーした選手にのみ、移籍の自由やボーナス受給の資格が与えられた。これを10年選手制度といい、1964年に金田正一が国鉄(現・東京ヤクルト)から巨人に移籍したケースがある。その後、65年には戦力の均衡化を目的としたドラフト制度が導入され、入団時にも選手側は球団を選べなくなる。さらに、75年限りで10年選手制度も全廃されると、選手にはプレーする球団を選ぶ権利がなくなった。

 また、選手が球団を移籍できるのはトレードになるか、所属球団を自由契約(解雇)となった場合であり、自らの希望による退団は任意引退とされた。任意引退した選手がプロ野球界への復帰を希望する場合は、最終所属球団に復帰するか、最終所属球団の許可を得なければ他球団とは契約できなかった。このように、プロ野球選手の身分は長い間、球団の意のままであったと言っていい。

フリーエージェント(FA)制度と
ドラフトにおける逆指名

 だが、アマチュアの逸材が希望外の球団からドラフト指名されて入団を拒否したり、人気選手がトレードを拒否して引退するといったケースが重なり、プロサッカーJリーグの発足も手伝ってプロ野球人気の危機が叫ばれると、93年にはフリーエージェント(FA)制度とドラフトにおける逆指名が導入された。