古河電気工業と昭和電工が、アルミニウム事業の統合交渉を開始した。

 国内アルミ業界は過剰設備と過当競争が長年の課題。そこに昨秋からの景気後退が追い打ちをかけ業界の再編機運は高まっていた。

 もっとも、本件はすんなり交渉成立とはいかなそうだ。

 今回は業界6位の昭電が、同首位の古河に持ちかけたもの。古河が優位な状況の下で、古河の関係者は「(統合交渉の成立する)確率は5割くらい」と、交渉決裂もありうることを早くも示唆している。

 昭電は圧延品よりも自動車や建築向けなどの特殊品の比率が高く、圧延品主体の古河との統合効果に疑問が残ることが背景にある。

 しかも、足元は自動車も建築も需要回復の兆しがまったく見えない状況。古河には圧延品でもLNG船向けなど独占商品があり、昭電の抱える製品群が喉から手が出るほど欲しいわけではない。「現時点で見えるメリットは、競争相手が減ることぐらい」(古河関係者)。

 つまり、古河のスタンスは「条件次第」。今後は詳細な資産査定を経て条件交渉が開始されるが、古河が優位な状況で進むことになりそうだ。

 だが昭電もやすやすと“買いたたかれる”わけにはいかない。昭電は主力の石油化学や電子素材部門が不振に陥っているが、さらなる収益悪化が進みそうな今日、アルミ事業のリストラ費用の捻出は苦しくなるからだ。

 もっとも、首位奪還を狙う住友軽金属工業(業界2位)や体力があるうえに自動車用が主力の神戸製鋼所(同3位)、二期連続赤字が見込まれる日本軽金属(同5位)も再編の核になると見られている。

 本件が成立しなかったとしても、第2、第3の再編話が登場してくる可能性が高い。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  鈴木豪)