中国の株式市場が、乱高下に見舞われている。8月20日、上海総合指数は政府が景気刺激策や相場のテコ入れ策を導入するとの観測から7.6%上昇。だが、政府からは結局なんの発表もなく、21~22日には反落した。

 この数ヵ月、市場は同様の動きを繰り返している。政府への期待が出るのも無理はない。上海総合指数は、昨年10月のピーク時から約6割も下落しているのだ。

 株価下落の要因は複合的だが、根本的には中国経済全体の減速と、企業業績の悪化があらわになっていることだ。昨年12月の本決算時では、中国上場企業の純利益総額は過去最高の前年比49%増という成長ぶりを見せた。

 しかし、資源価格や人件費の高騰、輸出の減速、さらに金融引き締めで、今年度上半期の国有企業の純利益は前年同期比10%減。民間製造業も利益の伸びが鈍化し、中小では赤字転落や倒産が続出している。

 株価低迷は、企業業績にも影響を与える。「昨年は多くの企業が株式売却益を決算時に上乗せし、利益に占める比率が3割に及ぶところもあった。今年はそれが剥落する」(鈴木貴元・みずほ総合研究所アジア調査部中国室上席主任研究員)。

 逆資産効果による消費への影響も無視できない。「たとえば自動車販売台数の急減速は、ガソリン値上げが要因といわれているが、実際には株価下落の影響のほうが大きい。株価をきっかけに不動産価格が下落を始めているのも懸念材料だ。今後は銀行や、機械を含む建設関連にも悪影響が出かねない」(関志雄・野村資本市場研究所シニアフェロー)。

 景気刺激策、株価対策の是非に関しては、政府内でも意見が分かれている。導入されても限定的なものにとどまり、企業業績や株価を回復させるには至らないと見る市場関係者が多い。投資家にとっては、当面逆風が続くことになりそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 河野拓郎)