次世代DVDの規格争いが激化。ソニー、松下電器産業などが推すブルーレイ・ディスク(BD)と、東芝などが推すHD DVDそれぞれが、標準規格の座をめぐって熾烈な競争を繰り広げている。規格の分裂は決定的となり、消耗戦は不可避の様相だ。

 まるでオセロゲームである。

 米国時間8月20日、これまでブルーレイ・ディスク(BD)、HD DVD両方の規格を採用してきた米映画大手パラマウント・ピクチャーズが、突如、今後はHD DVDでのみソフトを供給していくと表明した。ユニバーサル・ピクチャーズに加えて、これで米映画大手2社がHD DVD支持に回った。

 「なんの予兆もなかったので驚いた」(西谷清・ソニー執行役員ビデオ事業本部長)。BD陣営では、即座に、自陣営のウォルト・ディズニー、20世紀フォックス、ワーナー・ブラザーズなど米映画大手各社に“念押し”して回った。

  8月30日、BD規格の推進団体が、台湾エイサーが同団体に加盟したと発表した。するとその6日後の9月5日、今度は北米のHD DVD規格の推進団体が、エイサーが同団体に加盟したことを発表、やり返した。ただ団体に名を連ねただけの話なのだが、いずれの陣営も、世界シェア上位の大手パソコンメーカーをあたかも自陣営に取り込んだかのようにアピールしている。

  陣取り合戦ばかりではない。米国市場では、激しい値下げ競争が繰り広げられている。

  まず東芝が、今年4月、それまで499ドルだったHD DVDプレーヤーを399ドルに値下げし、戦いの火ぶたを切った。販売を伸ばす東芝に対しBD陣営は、松下電器産業が1299ドルのBDプレーヤーを599ドルに、ソニーは999ドルのモデルを799ドルまで下げた。すかさず東芝が、期間限定で同じモデルを399ドルから299ドルにすると、ソニーは、6月に499ドルで新製品を投入して失地を回復、東芝はいったん399ドルに戻した価格を再び299ドルに下げて対抗した。もちろん、こんな価格で各社とも採算が取れるわけがないのだが、「規格争いに勝つためのコスト」(関係者)として割り切っている。