旭化成は2月25日、国内石油化学事業を大幅にリストラすると発表した。世界シェアトップクラスのアクリル繊維原料(AN)の国内生産能力を年産45万トンから20万トンに半減させ、他にも複数製品の国内設備を停止する。

 さまざまな化学製品の主原料となるエチレンについては、岡山県水島地区の設備を2016年4月に廃棄することを正式に決定した。水島地区で同じくエチレン設備を持つ三菱ケミカルホールディングスと11年から共同事業組合を設立し、設備の1基化を検討してきた。旭化成の設備を廃棄することで決着がついた。

 石化事業は世界で価格競争が激化している。日本で生産する汎用品は価格競争力が低いため、「輸出をやめるというのが基本的な考え方」と旭化成の石化事業会社である旭化成ケミカルズの小林友二社長は言う。

 国内の石化産業は内需で消費し切れない分を輸出することで稼働率を維持させてきた。しかしアジアで大型設備が次々と立ち上がる中、採算は合わなくなっている。日本勢は事業の再構築が必須だ。

 旭化成も例外ではない。石化事業は投資先を海外に向け、タイや韓国、シンガポールでANや合成ゴム原料の最新鋭工場を稼働し収益確保に急いでいる。

 今回の国内石化再編で180億円の特別損失が発生し14年3月期の最終利益は650億円程度にとどまる見込み。それでも16年3月期の業績目標は、売上高2兆円規模、営業利益1600億円を掲げる。石化事業を利益体質にすると同時に、他の事業で稼ごうというもくろみがあるからだ。

初のヘルスケア出身社長

 旭化成の“顔”は石化事業だけではない。1931年の創業以来、10~20年単位で主力事業を乗り換えてきた。繊維に始まり石化、次に住宅、さらにエレクトロニクスや医薬・医療へと育成事業をシフトさせてきた。

 この結果、収益源は分散されている。13年3月期で見ると、営業利益920億円のうち、「住宅・建材」が582億円(対前年比21%増)、「ケミカル・繊維」が270億円(同43%減)、「医薬・医療」が159億円(同81%増)となっている。