大量エントリーが常態化し、企業にとっての採用コストの増加や採用効率の低下が問題視されている最近の就職活動事情。それに一石を投じるものとして注目されたのが、ドワンゴが昨年12月に発表した「入社試験受験料制度」だ。しかし今月3日、同社は厚生労働省から「来年度からはこの制度を中止するように」と、口頭で助言を受けたとことを発表した。同社の取り組みに理解を示す人も多く、これを白熱する就活の課題が凝縮された象徴的な一件と見る向きもある。こうした状況のなかで、足もとではドワンゴ以外にも独自の方法で求人を行う企業が増え始めているという。企業の方針の変化によって、今後就活事情はどのように変わっていく可能性があるのか。また就活生の側でも、意識をどのように変えていくべきなのか。(取材・文/小川たまか、プレスラボ)

ドワンゴの「受験料制度」に物言いも
大量エントリー常態化に悩む企業たち

「(応募書類を)100通も送るって、失礼な話ですよ」

 この発言でひんしゅくを買ったのは、タレントの神田うのさん。出演したフジテレビ系の情報番組で、ドワンゴの入社試験受験料制度が紹介された際に、「結婚だって1人の人としかできない」などと、大量エントリーが一般的となっている最近の就職活動について疑問を呈した。

 本人の世間知らずに見えるキャラクターもあってか、ネット上では批判が噴出。景気が回復傾向にあり、大卒の就職内定率も3年連続で改善傾向とはいえ、それは76.6%(2013年12月時点)にとどまり、リーマンショック以前の水準には戻っていない状況である。学生は必死だ。「数十社にエントリーしても内定が出ない」という話が珍しくないなか、うのさんの発言は「現実を知らない、マリーアントワネットのようなコメントだ」と思われてもおかしくない。

 しかし、大量エントリーが当たり前となった就職活動については、企業側からも疑問の声が上がりつつある。話題となったのが、前述のように昨年12月にドワンゴが発表した「受験料制度」だった。

 同社は昨年12月2日に発表したプレスリリースのなかで、「本命以外の企業への採用エントリー数が激増することで、採用倍率は跳ね上がっています。企業側も採用にかかる物理的な負担が激増し、本当に必要な人材を見極めるために十分な時間をかけることが難しい状況となっています」と指摘。