和田洋一
撮影:宇佐見利明

──「ファイナルファンタジー(FF)13」がいよいよ今年12月に発売される。

 ずいぶん、皆さんをお待たせしてしまったが、ストーリーと独自の世界観でユーザーの期待を決して裏切らない。期待してほしい。世界で累計600万本を売り上げた前作を超えたい。

──今年7月に発売した「ドラゴンクエスト(ドラクエ)9」は発売3週間で出荷本数350万本と最大ヒットしている。

 発売後の手応えはいい。当面の目標を、過去最高の国内500万本以上に据えている。

 じつはドラクエ9ではいろいろな仕掛けをつくってある。たとえばすれ違い通信。ニンテンドーDSの特性を生かし、ユーザー同士が無線通信でデータを交換できるようにし、ゲームをクリアした後でもさらに遊べるようにした。この戦略が奏功し、中古市場に流れる本数がずっと少ない。

──ドラクエをヒットさせる仕組みも考えてきたが。

 2007年に、業務用ゲーム機「ドラクエ モンスターバトルロード」を投入して、ドラクエ9発売の布石を打ってきた。ドラクエは発売から20年もたち、子どもの頃に遊んだファンも父親や母親になっている。まずはカードゲームで子どもにドラクエのモンスターで遊んでもらい、ドラクエ9が発売されたときに親子で楽しんでもらう。これがドラクエ文化の橋渡しになる。

──少子高齢社会で国内市場の伸びは見込めない。英国のアイドスを買収し、グローバル化にも本格的に乗り出した。

 アイドスは「トゥームレイダー」などの自社タイトルを持ち、開発能力が高い。欧米やアジアにも自社のスタジオを持っている。

 業績がよくなかったのは、どんぶり勘定などのマネジメントの問題と判断した。株価低迷をチャンスと見て、今年4月に121億円で買収した。

──シナジーはいつ頃、どのようなかたちで発揮されるのか。

 アイドスのタイトルが加わることで、海外の販売力が増す。目に見えないが、それよりも大きな成果として期待しているのが、日本と海外の開発陣の交流。お互いに学ぶべきことが多く、新しいものを生み出す原動力になる。

──今後のゲーム業界についての見通しは?

 いろいろな意味で転換期を迎えている。アイドスの買収をめぐって争ったのはタイムワーナーだった。メディアとコンテンツの融合が進み、競争相手はゲーム会社ではなくなる時代がきている。

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 大坪稚子)