深刻な状況に陥っているにもかかわらず、公的な目的のハードルに自らを合わせられないため、支援が受けられずにいる人は少なくない。

 そのため、税金が投入されている公的な支援であっても、支援団体等の設計思想に合わなくなって、離脱していく人たちがいる。

 こうして「もうこれ以上、傷つけられたくない」からと、支援の仕組みから一旦こぼれ落ちると、長期にわたる引きこもり状態に入って、地域に埋もれていった人たちを筆者は何人も知っている。

なんの力にもなってくれない役所、支援団体
30歳代の男性が受けた“たらい回し”

「自分がうつ病になったのは、会社に行く以外は引きこもっていて、ストレスのはけ口が皆無だったからだと思います」

 そう語る30歳代の男性は、高校時代から対人恐怖や赤面恐怖に悩み、会社に入社するものの、うつ病と言われて数年で退職。高校時代から含めると、ずっと長い間、引きこもり状態が続いているという。

 また、親に状況を訴えても理解はなく、家の外には、どこにも相談しようとしなかった。

 そこで、男性は退職後、役所が開設する「ひきこもりサポートネット」に自ら相談。そのサポートネットの担当者に紹介され、福祉課や支援団体などに連絡した。しかし、「たらい回しや冷たい対応、高額な請求等で、結局、何の力にもなってくれませんでした」と明かす。

 その後、いろいろ調べたところ、「ひきこもり地域支援センター」という国の相談機関があることを知った。

 そこで、同センターに行って状況を相談。紹介された病院に通い始め、「外出が怖い」「食欲がない」「眠れない」「元気が出ない」などの症状を訴えたものの、こんな対応を受けた。

「病院の先生に処方ミスをされ、SOSの電話も煙たがられるようになりました」。