正規社員と非正規社員の待遇格差は、何も日本固有の問題ではない。海の向こうのアメリカでも、パートや臨時雇いといった非正規社員の数は企業競争の激化を背景に増え続け、今や総労働力の約27%を占め、不況で雇用情勢や生活水準が悪化する中、待遇格差が深刻な社会問題となっている。その現状と事態打開の方策を、AFL-CIO(米国労働総同盟・産別会議)の幹部で、労働問題の第一人者であるスチュワート・アッカフ氏に聞いた。

米国でも深刻化する非正規社員の貧困問題
スチュワート・アッカフ AFL-CIO(米国労働総同盟・産別会議)会長執行補佐

 日本では不当な“派遣切り”が増えているというが、非正社員の待遇格差問題は米国でも深刻だ。米国人のパート、臨時雇いなど非正社員は約4000万人で、総労働力の約27%を占める。

 待遇格差解消には、なにはさておき正社員と非正社員の協力関係が欠かせない。正社員の多くは、会社が低賃金の非正社員を増やせば、いずれ自分たちのポストが危なくなるとの不安を持っている。したがって、非正社員の待遇改善のために一緒に闘うことは自らの利益にもなると納得すれば、彼らは立ち上がるだろう。

 米国最大の宅配会社UPSは、パート社員を大量に雇っている。同社のパート社員はチームスターズ(全米運輸労働組合)の支援を受けて組合を組織し、全米の配送センターで一斉ストを決行した。16日間に及ぶストと団体交渉のすえ、会社は組合側の要求をほぼ受け入れた。3年以上勤務のパート社員に健康保険・年金を提供し(同等の賃金はすでに獲得ずみ)、社内のパート社員を大幅に減らして正社員を増やすと確約したのだ。

 企業は人件費削減のため、低賃金でベネフィットもない非正社員を多く雇用するが、問題はそれでは彼らが貧困レベルの生活しかできないことだ。非正社員にも労働力を提供したぶんの分け前を受け取り、人間として最低限の生活を営む権利はあるのだ。それを会社にどう説明し、受け入れてもらうかだが、それは簡単ではない。