運輸業界は陸・海・空ともに成熟産業が多いものの、昨今の経済環境の変化を背景にしたビジネスモデル転換を図ろうとする企業が増えてきていると言えるだろう。過去、鉄道やエアラインなど旅客系産業では旅客需要の伸びが景気に遅行する動きがみられ、2014年は旅客需要の増加による業績改善が見込まれる。中期的には人口減少による旅客需要の減少リスクを踏まえ、継続的な低コスト化の施策に加え、不動産事業や中央新幹線など新たなビジネスによる利益成長を目論んでいる。トラックや海運など物流系産業は需給環境のミスマッチがみられるものの、コスト削減や運賃値上げなどの施策を打ってきている。

【運輸4業種】<br />景気回復に伴うヒト・モノの流れの変化に注目 <br />注目銘柄はJR東海、JAL、日本通運<br />――メリルリンチ日本証券リサーチアナリスト・土谷康仁つちや・やすひと
1995年3月同志社大学商学部卒。1998年3月神戸大学大学院経済学修士課程修了。1998年和光証券(現みずほ証券)入社。三菱UFJ証券などを経て、2005年10 月メリルリンチ日本証券入社。陸・海・空19銘柄のカバレッジだけでなく、中小型銘柄や未上場企業などを含めた幅広いリサーチを得意とする。2014年Institutional Investor誌アナリストランキング運輸部門第1位。

事業多角化を推進する鉄道業界:
注目企業はJR東海

 旅客需要は贅沢財として位置付けられ、所得の需要弾力性(所得の変化に対する需要の変化率)が高い商品と言えるだろう。そのため、旅客需要は所得や雇用環境の改善に遅れて回復するといった特徴がある。2014年は旅客需要の増加が鉄道各社の主要な営業増益要因になるだろう。他方、中期的には、①インフレに伴うコスト増や、②中期的な人口減少への対応力が問われている。

 2014年4月の消費増税に伴う運賃値上げは実施済みだが、インフレに伴うコスト増加を容易に運賃転嫁することができない。各社の運賃・料金の設定及び変更の手続きは、認可申請または届出が必要となるためだ。そのため、JR東日本はファーストクラスシート「グランクラス」の投入などにより、高付加価値商品に見合った運賃の底上げを狙っている。