先日の出張でワシントンに着いたときに乗ったタクシーの運転手は気のいいイラン人だった。

 ワシントンは、カリフォルニアの次に米国でイラン人が多いらしい。信号待ちの際に、彼は隣のタクシー運転手に手を振っていた。友人のアフガニスタン人だという。

 ホテルで荷物を部屋に運んでくれた黒人男性は、「日本から来たのならオスマン・サンコンを知ってるか? あれはオレのいとこだ」とうれしそうに話していた。彼もギニアから移住してきたという。いまさらながらではあるが、米国は移民国家だと実感される。

 オバマ政権はヘルスケア(医療保険)改革を実現させようと苦闘している。しかし、日本でも報道されているように、改革案は激しい攻撃を受けている。

 9月12日にはワシントンに全米から反対派が集結した。筆者のホテルにも、デモに参加しようとプラカードを持っていた宿泊客が大勢いた。

 彼らの批判は、異様なほどエキセントリックだ。オバマを社会主義者、共産主義者と批判するのは上品なほうで、ナチズムと罵倒する声もある。

 背景に何があるのか、われわれ日本人には理解が難しいが、1つには、国民皆保険制度は、大前提として、“国民はすべて同胞”という共通意識が必要であるように思われる。

 米国は冒頭のように移民社会だ。自己責任で移住して来た人びとに、所得移転を行なう必要があるのか? と感じる人は多いようである。