サッカー岡田監督が在籍した「杭州緑城」にも影響 <br />中国“不動産神話”崩壊の序曲杭州に向かう沿線はどこもかしこも住宅だらけ Photo by Konatsu Himeda

“中国の横浜”杭州市で
住宅供給のダブつきが実に3年分

 5月、筆者は浙江省に向かう高速鉄道の中にいた。その車窓から見えるのは、著しい数の住宅群だ。列車が上海虹橋駅を出ると、変に意匠を凝らした悪趣味な豪邸が目に飛び込んでくる。地元の農民が建てた自宅だ。上海を過ぎ、浙江省の省都である杭州市が近くなるにつれ、今度は無数の高層マンションが飛び込んでくる。建設途中でストップしたかのような建造物もある。

 仮に上海を東京に例えれば、浙江省はさしずめ神奈川県といったところであり、杭州は横浜に相当する。いわば華東地区を支える重要な経済圏だ。しかし、東京を中心とした首都圏で、車窓からこれほどの高層マンション群を目にすることはない。中国の人口の多さを加味しても、いかにもこれは供給過剰ではないか、と思うほどだ。

 案の定、「供給過剰」は杭州市の経済を左右する大問題になっていた。今年2月、杭州で激震が走った。住宅価格が下落したのである。複数の新規分譲マンションで値崩れが起こり、中には平米単価が3割下落したところもあった。

 杭州市は外資系企業も多数進出する商工業の発展した都市であり、また同時に風光明媚な観光都市でもある。こうした沿海部の二級都市(中国では全国の都市を級別に分ける。ちなみに一級都市は北京、上海、広州、深センの4都市)は、これまで順調に経済成長を遂げており、住宅供給のダブつきは一時的にはあったにせよ、深刻な経済問題になることはほとんどなかった。

 しかし、順風満帆な経済発展を遂げているはずの杭州だったが、中国紙「南方周末」によればついに「全国で最もストック(不動産の在庫)が多い都市」のワースト1位にランキングされた。2014年3月の時点で、杭州市の新規分譲住宅のストックは11万戸、中古住宅は10万戸を超えた。杭州市で毎年消化される住宅戸数は8万戸だと言われているが、実に3年分がダブついているという計算である。