物価上昇はディマンド・プル型

 岩田規久男日銀副総裁が26日に都内で講演した。相変わらず、教科書をきちんと踏まえた講演でわかりやすい。その中で話題になっているのは、「量的・質的金融緩和」以降の物価の上昇は、ディマンド・プル型だというところだ。

 1年前には、まだリフレ派とデフレ派の間で、金融政策の効果に関して議論があった。リフレ派は金融政策が実質金利(名目金利-予想インフレ率)を低下させ、有効需要を増やして実質GDPの増加と失業率の改善をもたらすといい、デフレ派は金融政策の効果はなく、金融緩和は名目金利の上昇やハイパーインフレになるといった。

 金融政策の効果は、例えば昨年12月14日付けの本コラム図1であるが、それと同じ図が、岩田副総裁の講演にも出てくる。26日の講演の図表6である。本コラムの出典を見ればわかるが、もともと10年以上前に書いた本にあるものだ。

 1年前までは、両者で議論していたが、今はもうほぼない。既に結果が出ているからだ。さすがに、アカデミックレベルでは表だって言う人はほぼいないと思っていたが、例外もまれにあるようだ。街の自称エコノミストの中にも、目の前に出ている結果について、目を背ける人もいる。そうした人たちが、言っているのも今の物価の上昇は、ディマンド・プルではなく、コスト・プッシュというわけだ。

 そのロジックは、何かの原因(日銀の金融緩和でないというが、何かは特定しない!)で、円安になって、それが企業のコストアップ要因になって、物価を押し上げているというのだ。

 物価の上昇には二つのタイプがある。ディマンド・プルとコスト・プッシュだ。教科書的にいえば、前者は、総需要を押し上げること(総需要曲線を右にシフトさせること)によって、後者は総供給を押し上げる(総供給曲線を左にシフトさせること)によって、物価を上昇させる(図1)。

現在のインフレは金融政策の効果 <br />懸念は1997年型に近づく消費税増税の影響