シリア大統領選挙は反体制派地区を空爆(!)する中で実施され、平和的解決、国民的和解はほぼ絶望となったと言ってよい。アサド大統領の三選は確実だが、シリア情勢の展望は真っ暗だ。

 アサド現大統領は、前大統領の二男。内戦で10数万人が死んでもブレーキがかからない。国民的分裂なぞ意に介しないのだろう。

 タイの混迷も深まるばかり。失脚したインラック前首相はタクシン元首相の妹。彼女にすべての責任を押し付けるつもりはないが、収拾する意志と力が欠けている。

日本、中国、韓国、北朝鮮
トップはすべて世襲政治家という現状

 近年の世界政治を見ると、世襲政治家が国のトップに立っている例が実に多い。

 アジアももちろんそうだが、特に東アジアと呼ばれる日本、中国、韓国、北朝鮮の4ヵ国は、すべて世襲政治家がトップを占めている。

 東アジアの緊張が緩和されない理由はさまざまだが、私は最近、世襲指導者に共通する何かが一因ではないかとも考えている。

 世襲政治家の主たる共通点は、①政治基盤を継承していることと②その政治基盤の意向に沿わなければならないことである。

 政治基盤だけでなく、それを築いた父や祖父なども言動を制約する存在になっていることも特徴だ。亡き父から評価されたい、父を上回る功績を挙げたい、という特別の想いもあるようだ。

 それから世襲政治家は大別して2種類ある。自ら手を挙げて政治基盤を引き継いだ人と、逆に政治基盤から推され擁立された人だ。前者には事業欲、権勢欲、功名心が強い人が多く、後者にはごく常識的で穏健な人が多い。国家の指導者に昇りつめた人は、どちらかと言うと前者に属する人が大半だ。父に指名されて登場したアサドは後者だからこの違いはそれほどないのだろう。

 このような世襲政治家に共通の性格や政治手法は、良かれ悪しかれ“無鉄砲さ”ではないか。それに独特の意固地さが加わると実にはた迷惑となる。