大規模リコール(回収・無償修理)問題に直面するトヨタ自動車の対応を巡る米国の論調が、バッシングの様相を呈してきた。米国を代表する自動車コンサルタントのマリアン・ケラー氏は、トヨタ側のうかつな問題発言といい、事態把握能力の低下といい、通常では考えられないことが起きていると警鐘を鳴らす。

―大規模リコール(回収・無償修理)問題を受けて、米国でトヨタ叩き(たたき)が過熱している。なぜトヨタはかくも叩かれなければならないのか?

マリアン・ケラー
マリアン・ケラー
(Maryann N. Keller)
米国を代表する自動車業界コンサルタント。1994~99年、全米自動車業界アナリスト協会会長。現在は、マリアン・ケラー・アソシエーツ代表として、コンサルタント業に従事。著書に『GM帝国の崩壊』『激突―トヨタ、GM、VWの熾烈な闘い』(共に草思社)がある。
Photo by Minori Yoshida

 私自身、今回の問題がこれ以上エスカレートすることを望んでいないので、順を追って冷静に説明したい。

 まずリコール自体は、珍しいことではない。私のもとにも先日、日産自動車からリコールのレターが届いたばかりだ。通常のリコールならば、車をディーラーに持って行き、すぐに無償で修理してもらえるというタイプのものだろう。

 今回のトヨタのリコールの中でも、たとえば、最新モデルの「プリウス」はそうしたケースだ。発売後に欠陥が明らかになり、無償で修理してもらえる。そうしたリコールはこれまでも業界で行われてきた通常の手続きのようなものであり、本来はメーカーの評判を悪くするようなものではない。

 では、なぜ今回のトヨタのケースは違ったのか。