ビジネス環境の変化のスピードがますます加速している現在、長年にわたって企業活動を支え続けてきた基幹システムが、変化への対応の足かせになるケースは少なくない。激変の時代に勝ち残っていくためには、こうした既存のIT資産を新たな技術で再構築し、ビジネスに活用することが求められる。これまでにない環境変化に直面する関西電力では、ビジネスを支える基幹システムを刷新し変化への対応力の強化に成功した。そのポイントはどこにあったのだろうか。

20年以上にわたって
使い続けたシステムが
運用面の課題に直面

「長年にわたる悲願をやっと達成することができました」と語るのは、今回のシステム刷新を担当した関西電力の梅田亘康氏。同社では情報システム子会社である関電システムソリューションズ(以下、KS‐SOL)とのタッグの下、2009年から約4年の年月をかけて、数社のパートナーとともに同社の基幹システムの全面的な刷新に取り組んできた。

 プロジェクトの対象になったのは「基幹重点情報システム」と呼ばれる、同社のビジネスの根幹を支えるシステムである。「電力会社はインフラ産業。設備を作って、ビジネスをしています。新しい設備を計画して構築し、寿命が来れば廃棄する。この一連の事務処理業務をITによって支援しているのが基幹重点情報システムです」と梅田氏。大きくは、工事、経理、資材・購買の三つのサブシステムから構成され、全体が一つの大きなシステムとしてメインフレーム上で稼働していた。

「昔はもちろん、こうした業務を手作業で管理していました。それをシステム化し、データの一元管理を実現したのが1988年。以来、20年以上にわたって使い続けてきました。当初は一つのシステムであることに大きなメリットがあったのですが、ITの利用範囲が広がるとともに、周辺に個別のシステムが構築され、運用が複雑になっていました」(梅田氏)

 実際に基幹重点情報システムの周辺には、企業全体の財務会計を取りまとめるERPシステムや設備保全の状況を管理するシステム、経費精算や情報共有の周辺システムなどが構築され、データの受け渡しが行われていた。システム間で機能が重複してしまったり、逆にどのシステムも担当できない空洞化した機能が発生してしまうような事態も発生していた。また、業務ごとのシステムの使い分けや、データの二重入力を余儀なくされるなど、ユーザーの業務処理の負担も増大しつつあった。

変化対応力の強化のため
システムの再構築を決断

「問題は運用の負荷だけではありません。複数のサブシステムが一つのシステムにまとめられているために、一つの機能に修正を加えると、ほかのサブシステムにも修正が必要になるなど、システム面でも硬直したものになっていたのです」と梅田氏。例えば、工事部門で組織変更があると、直接関係のない経理や資材・購買の部分にも修正が必要になる。これでは組織改編が行われるたびに大規模なシステム改修が必要になり、時間もコストもかかることになる。

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