毎年600億円のロイヤルティー収入を生む高脂血症薬「クレストール」が2016年に特許切れを迎える塩野義製薬。医薬品は特許が切れた途端に売り上げが急減してしまう。主力品の特許切れを乗り越えて成長するための中期経営計画を一年前倒しで見直した事情と今後の成長戦略を聞いた。

塩野義製薬社長 手代木 功 <br />5000億円企業になった後のM&Aが理想てしろぎ・いさお/1959年生まれ。宮城県出身。東京大学薬学部卒業後、塩野義製薬に入社。秘書室長、経営企画部長、医薬研究開発本部長など経て、2008年に48歳の若さで社長就任。開発畑出身で、米国での営業経験もある国際派。
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――なぜ中計を見直したのですか。

 2010年に5カ年計画(10~14年度)を策定した段階では、開発中の新しい医薬品がどんどん販売承認を得られる見通しだったので、最大市場である米国において、自力で広く販売していくつもりでした。だから08年に現地で販売網を持つ製薬会社を買収しました。

――その米国で想定外のことが起こった?

 そうです。承認取得に一番近づいていた抗肥満薬は、米国でのマーケットを非常に期待していました。ところが、当社よりも先に承認申請が出された他社の開発品三つを、米国当局がことごとく不承認としたのです。抗肥満薬承認のハードルがすごく上がり、このまま開発投資を続けても承認されないリスク、たとえ承認されても市場が大きくならないリスクが高いと判断し、2011年に開発を中止しました。

 買収した会社で売る予定だった期待の新薬が消えてしまい、その会社がもともと持っていたのは古い薬ばかりでどんどん特許が切れました。厳しいリストラを実施して、13年に婦人科領域の新薬を発売したことで立て直しましたが、米国以外にも、世界のマーケット動向、為替などでも想定外がいろいろと重なりました。さらに製品に関してパートナーとの契約内容の変更もあったので、計画全体を練り直すことにしました。