品定めに光る目。飛び交う売買額。群馬県前橋市で週1回開かれるオークションは熱気に包まれている。バイヤーの視線の先にあるのは美術品ではない。オフィス用の中古机、椅子、書棚などの山だ。

 オフィス家具大手であるプラスの物流子会社、プラスロジスティクスは2002年からオフィス中古家具のオークションを運営している。同社が取引する全国のオフィスから中古家具を集め、リサイクルショップ約150社が会員となっているオークションへ出品。売買成立に伴いプラスロジスティクスが手数料を受け取る仕組みだ。

 景気悪化によって、オークションビジネスは活気づいている。倒産した不動産会社などの管財人や、事業縮小で事務所を閉鎖する企業からの引き取り依頼が急増し、4月の出品量は「前年同月比2~3割増し」(プラスロジスティクスの榎克幸部長)。1月からは関西地区でも開催している。

 中古需要自体は昔からあったが、「供給が追いつかず、商機を逃してきた」とリサイクルショップ大手。上場企業が内部統制報告制度導入の準備に取り組んだ07年前後には書類保存用に書棚需要が急増するも、早々に品切れ。昨今、景気後退による相次ぐ事務所閉鎖で一気に供給量が増え、ショップ各社はようやく豊富な在庫を蓄えられるようになったというわけだ。

 しかしオークションに参加するバイヤーの心境は複雑。コスト削減策として大手企業でも新品購入を控えて3~9割安の中古品に手を伸ばす動きは出ているが、今は供給量があまりにも多い。需給が緩み、中古品価格は下落傾向にある。

 商品確保は競争力に直結するため、ショップとしては買い取りチャンスを見逃したくない。その結果、ショップの倉庫は溢れ返り、“我慢在庫”の状態である。

 全国にオフィス中古家具リサイクルショップは300社弱あり、数百億円規模の市場と推測される。業界は市場拡大のなかでの淘汰という新たな局面を迎えている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 臼井真粧美)