危機下の社長就任から2年、津賀パナソニックが息を吹き返している。あくまで収益体質を重視すると公言した経営陣が、再び増収の高い目標を掲げた。

 経営危機から息を吹き返しつつあるパナソニックが、連結売上高で「10兆円」という目標を三たび掲げている。

 3月下旬、津賀一宏社長は事業方針説明会の冒頭で、創業100周年の節目に当たる2018年度に、事業規模で10兆円の会社を目指すという目標を語った。

「何度もトライしてはじき返されてきたが、今回はどうしても達成させたい」(津賀社長)

 5年後の目標故に、緻密に数字を積み上げた公約ではないにせよ、全体の80%を構成するのは“非家電”の法人向け(B2B)事業だ。車載と住宅の両ビジネスの2兆円を筆頭に、食品流通から航空機関連まで含めたソリューション事業の2.5兆円などに大きな伸びしろを見込み、今後ビジネスを創出する分野に経営資源を注ぐことを強く示唆した。

 実は、同社は2000年代後半、2度にわたって「10兆円」を中期経営計画の中で公言しながら、それぞれ経営陣の思惑とは懸け離れた惨敗を喫している。

 1度目は、巨費を注いだプラズマテレビなどデジタル家電を成長エンジンに据えた中期計画「GP3」(07~09年度)。韓国メーカーとのシェア競争で劣勢に立ち、08年のリーマンショック後に赤字計上、大幅未達に終わった。

 2度目は、三洋電機の完全子会社化による環境革新企業へのシフトを盛り込んだ「GT12」(10~12年度)だ。買収したリチウムイオン電池の競争環境が想定以上に悪化した上、薄型テレビ戦略の破綻が1兆円を超える巨額赤字の引き金となり、目標達成はおろか深刻な経営危機に陥った。

 そんな“因縁の数字”を持ち出したのは、約2年間に及ぶ構造改革で黒字転換を果たして、いよいよ事業ベースでの再成長が急務になっているからだ。