閣議決定全文は論旨が不明で難解

 安倍晋三政権は7月1日、日本が、(1)他国間の戦争に参戦する(集団的自衛権の行使)道を、(2)最悪の禁じ手(解釈改憲)を使って強引に切り拓いた。

 6月27、28日に実施された毎日新聞の世論調査によると、(1)の集団的自衛権の行使に反対する人は58%(賛成は32%)、(2)の解釈改憲に反対する人は60%(賛成は27%)、しかも理解が深まるにつれて調査結果のこの傾向は急激に強まっている。

 こんな民意を恐れてか、今回の閣議決定は、(1)と(2)を極力ぼかして反発を避けようとしている印象を受ける。そのためか、著しく論旨が不明で難解な悪文となっている。

 (1)については、山口那津男公明党代表が閣議決定後の記者会見で「いわゆる集団的自衛権の行使を認めるものではない」と説明しているように玉虫色の解釈も成り立つように工夫されている。

 本文では昭和47年の政府見解に触れたところ。「我が国と密接な関係にある他国に対する武力行使が発生し、(中略)必要最小限度の実力を行使する…」の部分。そして、「憲法上許容される上記の『武力の行使』は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」としたくだり。少なくともこの離れ離れに書き込んだ3点をつないで解釈すれば、集団的自衛権の行使を認めたと読み取れるようになっている。端的で直接的な表現を避けたので実にややこしく、国民に対する誠実さを大きく欠くことになった。

 (2)については、そもそも「解釈改憲はしていない」という姿勢を貫くつもりのようである。

 首相は記者会見で、「現行の憲法解釈の基本的考え方は変わらない」と開き直った。「憲法の規範性をなんら変更するものではない」とも強調した。

 しかし、内外ともにこの閣議決定によって、日本は憲法改正の手続きを経ずに、政府による恣意的な解釈変更によって、集団的自衛権の行使を可能にしたと受け止めている。