“史上最強”と言われたサッカー日本代表は、ベスト8以上を目指してワールドカップ・ブラジル大会に臨んだが、一つの白星を挙げることすら叶わなかった。その敗因は様々に分析されているが、企業経営の視点から、今回の敗因はどう見えるのか。ボストン コンサルティング グループ・日本代表で、スポーツにも造詣が深い水越豊氏は「弱くても勝つことを考えるのが経営者であり指導者」とその役割を述べたうえで、「成功体験は引き継ぐことが難しいが、失敗体験にこそ、次の成功を確率を上げる教訓が潜んでいる」と語る。(構成/ダイヤモンド・オンライン編集部 安田有希子)

興業的には大成功
強化試合を盛り上げすぎ?

サッカー日本代表1次リーグ敗退 <br />企業がこの失敗から学べること<br />――ボストン コンサルティング グループ<br />日本代表・水越 豊みずこし・ゆたか
ボストン コンサルティング グループ 日本代表 東京大学経済学部卒業。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。新日本製鐵株式会社を経て現在に至る。BCGテクノロジー・メディア・テレコミュニケーション・プラクティス、ヘルスケア・プラクティス、エネルギー・プラクティスのコアメンバー。なでしこリーグへの無償のコンサルティング支援(プロボノ・プロジェクト)を担当。著書に 『BCG戦略コンセプト』(ダイヤモンド社)、また監修に『新興国発 超優良企業 GLOBALITY』(講談社)がある。学生時代はラグビー部に所属。幅広い競技に対して解説者並みの知見を持つBCGのスポーツ博士。
Photo by Toshiaki Usami

 近年、サッカーは大変なビッグビジネスに成長しています。代表戦を組むと、放映権料はたくさん取れますし、ユニフォームなどのグッズも売れます。2002年には日韓ワールドカップも開催され、前回の南アフリカ大会では16強まで残ったこともあり、日本代表はますますドル箱になっているのです。

 今回のワールドカップに向けて日本代表は強化試合を行ってきました。しかし、試合の相手は弱いチーム、もしくはアルゼンチン代表などの強豪だとしても、必ずしも一軍ではありませんでした。本来はそういった弱い相手に勝利しても盛り上がらないはずですが、メディアは「アルゼンチンを撃破!」などと大騒ぎするわけです。

 それは、ブランド戦略、ショーとしてのサッカーをマネタイズする、という意味では、大変いい仕事をしてきたと思います。それによって強化費を稼ぐこともできるわけですしね。

 強化試合の勝利ばかりでなく、今回の日本代表が史上最強だという論調があったのは、欧州でプレーする選手が増えてきているためでした。しかし日本の選手は、ジャパンマネー(日本での放映権料、グッズの販売など)がついているから、チームのレベルを1ランクか2ランクアップして欧州へ行くわけです。だから試合に出してもらえない…。

 イギリスのプレミアリーグなどの企業スポンサーの数を見ると、アジアの企業が圧倒的に多いのが現状です。日本での放映権料は半端な額ではありませんので、彼等としてはそれを無視できません。