こんなに貿易赤字が拡大して大丈夫?
経常収支にまで黄信号が灯るリスク

「貿易赤字がこれほど拡大して、日本は大丈夫なのでしょうか?」

 この頃、日本の貿易赤字について尋ねられることが多い。 

 つい最近まで、わが国は貿易黒字基調を続けてきた。かつては貿易黒字が大きすぎて、米国などとの間に深刻な貿易摩擦が発生したこともある。だがそうした時期は“今は昔”であり、2013年度の貿易収支は13兆7488憶円と3年連続で赤字に落ち込んだ。赤字額は、オイルショックのあった1979年度以降で最大であった。

 この数字だけ見ると、輸出の手取り代金よりも輸入の支払い代金の方がはるかに多いわけだから、人々が心配になるのはよくわかる。確かに貿易に関するお金の流れを考えると、貿易収支は赤字よりも黒字の方がよいと言えるかもしれない。

 ただ、海外とのお金のやり取りは貿易だけではない。その他に、海外との保険や弁護士費用などのサービスに係るお金のやり取りを示すサービス収支、直接投資などの収益に係る所得収支、さらに政府間援助などの経常移転収支がある。それら全体をまとめたものが経常収支だ。

 わが国の場合、貿易収支は大幅赤字だが、それを所得収支が補って何とか経常収支は黒字を保っている。経常収支が黒字の間は、海外との日常的なお金のやり取りは受け取りの方が多いため、それほど心配する必要はないだろう。

 問題は、足もとの経常収支の推移を見ると、貿易赤字額が大きく膨らんでいるため、その黒字にも黄色信号が灯り始めていることだ。ここで、貿易赤字に関するわが国経済の今後の展開と問題点を考えてみたい。

 わが国の貿易収支は、東日本大震災の前年まで黒字基調を続けてきた。1980年代には、多額の貿易黒字のため米国との間で深刻な貿易摩擦が発生した。摩擦解消のために、当時のわが国政府は航空機の緊急輸入などの措置をとらざるを得なかったほどだ。