検討が進む配偶者控除の見直しは、税負担が増える世帯が出るため、税制や女性の労働環境、企業の姿勢などの他に、家計設計という視点でも、その影響を考えるべきだろう。そこで、これまで3万件以上、家計の相談を受けてきた家計設計のプロはどう見ているのか、「家計の見直し相談センター」(生活デザイン)の藤川太氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

「女性の活躍推進」が目的なら効果はないのでは?<br />保育所整備など世帯所得を上げる政策こそ重要<br />――藤川 太・生活デザイン社長ふじかわ・ふとし
1968年、山口県生まれ。生活デザイン社長。慶応義塾大学大学院理工学研究科を終了後、自動車会社での研究者を経て、フィナンシャルプランナーに。2001年、「家計の見直しセンター」設立。『サラリーマンは2度破産する』など著書多数。
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配偶者控除見直しは一部世帯の
家計にダメージを与えることに

――配偶者控除の見直しが年末に向けて具体的に検討されます。現在の制度にある「二重の控除」を是正するという見直しが有力なようです。どのようにご覧になりますか。

 財政検証でも、これからは社会保障全体を維持するためには女性と高齢者の労働参加がカギを握るということが書かれていました。政府にとっては、女性がもっと働くような社会の実現に向けて、一丸となって突き進んでいかないといけない、ということなのでしょう。配偶者控除の見直しも、女性を働かせるということと、厳しい国の財政を維持させるために税収を確保したいという思惑が読み取れます。

――見直しの目的は、表向きには「女性の活躍推進」ということなのですが、配偶者控除見直しと女性の活躍推進は結びつかないという指摘は多くあります。

 私たちが多くの方々の家計を見ている経験からすると、女性が社会に出ていけない理由というのは、配偶者控除が原因ではありません。配偶者控除の制度が見直されたからといって、「じゃあ、もっと働こう」という風に思わないのではないでしょうか。

 だから、見直しの目的が「女性の活躍推進」なのであれば、見直しする意味はほとんどないでしょう。それよりも、税負担が増える世帯にとっては、家計にダメージが与えられるだけです。