「社員がブログに会社の誹謗中傷や顧客情報を記載し、取引先からクレームが来ている」

 「社員が消費者金融から多大な借金をしている。業務中に本人の携帯に電話が何回もあり、業務がままならない状況だ」――。

 労務に関する相談は、近年高度化、多様化しています。そこで、労使間のトラブルを抑制するための重要ポイントの1つに「服務規律」の規定が挙げられます。

守ってほしい服務規律を具体的に明記する

 服務規律は、企業秩序の維持、社風づくり、そして会社と社員の働き方に対する認識の違いを埋めるために設けられます。社員として守るべき義務、行なってはいけないことが定めるわけですが、具体的には、社員が秩序を乱さないよう、その行動を適切に管理できるような規定にしたいものです。

 服務規律を決めるにあたり、事由は詳細に明記し、社員に周知させましょう。服務規程違反を根拠として懲戒処分を実施する場合、その事由の就業規則への明記、社員への周知がないと懲戒処分としての根拠がないとされる可能性があります(参考:フジ興産事件、最高裁、H15.10.10 及び労働契約法15条など)。

 御社の社風や企業風土に合わせ、かつ、「社長から社員に対する思い」として、積極的・具体的に規定内容を明記してください。

「口ひげはダメ」「社内恋愛禁止」はOKか

 「服務規律は具体的に」とはいえ、際限なく決められるわけではありません。あくまで企業秩序の維持が目的であり、プライバシーや私生活など社員の人格や自由との調和が求められます。企業は社員の生活全般までを管理することはできません。業務運営上の必要性もないのに人格や自由を制約することはできません。

 たとえば、服務規律に「口ひげはやめましょう」と記載します。しかし、社員がその規定を無視し、実際に口ひげを生やしたことで懲戒処分とするには、口ひげを生やすことが企業秩序を乱し、業務運営上規制が必要であることの証明が必要です。