わが家は食器に対しては比較的こだわっている方だ。私のコラムなどでも結構、食器のことを取り上げている。2011年5月5日にアップされた「テーブルウェア時代を迎え目覚める中国の食器市場の鉱脈」もその一つだ。コラムのなかで、私はある接待風景に目を奪われた。

テーブルウェア文化の差

 2004年3月、共同演習のためフランス海軍の駆逐艦ラトゥーシュ・トレヴィル (Latouche Treville)ほか1隻が中国青島を訪れた。青島到着当日、フランス側の2人の艦長が二十数名の将校を連れて、中国海軍の駆逐艦哈爾濱号を表敬訪問した。中国側は応接間にミネラルウォーターのペットボトルを用意した。翌日、中国側の将校がラトゥーシュ・トレヴィルを訪ねたが、フランス側は美しい磁器のコーヒーカップでコーヒーとジュースを運んできた。

 テーブルウェア文化の差をまざまざと見せつけられた一瞬だった。

 所得事情の向上に従って、中国人の住宅事情も相当改善した。家が広くなり、内装も豪華だ。大理石はイタリアのものしか使わないとか、室内のインテリアへのこだわりもすごい。だが、食器類が貧相なままの家が多い。訪ねてきた客に、ジュースやミネラルウォーターを缶かボトルごと渡す家庭がほとんどだ。10年前の2004年に、私は日本の全国紙で、「上品な食器のシーンに出会った覚えは、いまのところまだない」という嘆きを書いた。

 その意味では、「テーブルウェア時代を迎え目覚める中国の食器市場の鉱脈」に取り上げられた中国海軍とフランス海軍の接待風景の対照はそのまま、中国社会の実情を真実に映し出していると理解していい。

 しかし、考えてみれば、こう指摘している私の食器への開眼も日本に移住してからようやくできたものだ。仕事柄、外食も多い。今や、食事の内容のほかに、食器への関心も高まってきた。