厳しさを増すロシアに対する世論
旅客機撃墜事件の予想外の影響

 7月17日、マレーシア航空の旅客機が、ウクライナ上空で撃墜されてから早くも数週間の時が過ぎた。今のところ、同機が地対空ミサイルで撃墜されたことはほぼ間違いないようだが、実際誰がミサイルを発射したかは特定できていない。

 ただ、米国のオバマ大統領が「親ロシア勢力がミサイルを誤射した可能性が高い」と指摘していることや、その後のロシアのプーチン大統領の態度を見ると、世の中の大勢は「親ロシア勢力の仕業だろう」と感じているだろう。

 今回の不幸な出来事は突発的な事故だったため、ロシアや米国、多くの犠牲者を出したオランダやマレーシアなど、多くの関係国に予想外の影響をもたらした。300人近い犠牲者を出し、しかも犠牲者が多くの国にまたがっていたこともあり、世界のロシアに対する世論はかなり厳しくなっている。

 今後、欧米諸国はロシアに対して一段と厳しい制裁措置をとることになるだろう。制裁措置の効果は、ロシア経済にとってボディーブローのように効いてくるはずだ。ロシア経済が大きく痛手を受けるようだと、ロシア国内のプーチン大統領の支持率にも悪影響が出るはずだ。

 また、ロシアから大量の天然ガスを輸入している西欧諸国にとっても、エネルギー問題に関してマイナスの影響が出ることは好ましいことではないはずだ。そうした事態を想定して、足もとで欧州諸国の株価は不安定な展開を示している。

 今回は、門外漢の経済学者なりに、ウクライナ情勢とそれに関連した国際情勢について整理してみたい。

 ウクライナ情勢を一言で表現すると、西欧諸国とロシアの陣取り争いの様相を呈しているということが言えるだろう。1990年代にソビエト社会主義共和国連邦が崩壊し、かつてソ連の一員だったウクライナや、ロシアの勢力圏に入っていた東欧諸国は、とりあえず自由に国の運営をできるようになった。