ソフトバンクの「期待の星」iPhone(アイフォーン)の発売が7月11日に迫ってきた。「13ヵ月連続純増ナンバーワン」という表向きの華々しいイメージと異なり、同グループは連結ベースで3兆7101億円の負債(長短借入金の合計は2兆352億円)の塊だ。しかも、同業他社より2000円近くも安いARPU(ユーザー1人当たり1ヵ月の平均通信量収入)に苦しむ低収益力会社と言わざるを得ない。孫正義社長がトップ外交で「NTTドコモが圧倒的に有利だ」という業界の下馬評を覆し獲得した米アップルコンピュータ製のiPhoneには、本当に、そうしたアキレス腱を強化する力があるのかどうか検証してみよう。

 今さらクドクド説明する必要はないだろう。

 iPhoneは手のひらサイズに、携帯音楽プレーヤーや携帯情報端末(PDA)などの機能を組み合わせた電話(通信)機だ。液晶ディスプレイ上に表示されるタッチパッドで簡単に操作できるのが特色のひとつで、ハード的な操作ボタンを多く必要としないため、デザインもすっきりおしゃれにまとまっている。

米国ではAT&Tが
iPhone人気で大増益

 米国で昨年6月末に発売して以来、欧米ではすでに500万台以上を売る成功を収めた。収益面でみても、今年第1四半期(1―3月)のアップルの純利益を前年同期比で36%も拡大させた。

 もちろん、通信会社にとっても、iPhoneを品揃えに加えることは大変なメリットだ。米国では、スプリントのような通信大手が景気後退の直撃弾を受けて、最終損益で赤字に転落した企業が少なくないが、iPhoneが使用可能なAT&Tだけは第1四半期の純利益が同21.5%増加と気を吐いた。世界の通信事業の分野では、異例中の異例だが、iPhoneの貢献を評価して、AT&Tがアップルに通信料収入の一部をキックバックしているという噂もまことしやかに伝えられていた。

 これまで第2世代携帯電話向けのバージョンしかなかったが、アップルは今回、第3世代携帯電話向けのバージョンを世界同時発売する。

 このうち、日本向けについて、当初、業界ナンバーワンのNTTドコモがアップルとの契約交渉を有利に進めていたとされる。ところが、孫社長は、旧知のステーブ・ジョブスCEO(最高経営責任者)との極秘トップ会談を繰り返した。そして、大方の予想を覆し、日本向けのiPhoneの販売権を獲得して、ビジネス界をアッと驚かせたのだ。