今回は人気の通信制大学院を紹介する。東京・町田に本拠を置く桜美林大学の大学アドミニストレーション研究科は、2001年に母体となる通学制の専攻が誕生し、2004年に通信教育課程が開設、2008年の改組で研究科が独立した。

 最近設立された大学院の中では、出色の躍進ぶりである。一見、一般のビジネスマンとは関係なさそうに見えるこの研究科だが、じつはそうとも言い切れないので、最後まで読んでほしい。

 もともとこの大学院は、現職の大学職員(教員ではなく事務方)を想定して解説されている。研究する内容=大学アドミニストレーションとは、は大学の管理・運営にあたる行政管理の専門職。18歳人口の減少のもと、大学冬の時代が言われる中で、サバイバルの戦略を担う人材の要請に応えるように誕生した。

 一方で現職の大学職員にしても、この大学院の学位はキャリアパスとして広く通用する。大学新卒時に学歴横並びで就職することが多い大学職員にとって、学歴とその研究内容で抜きんでるために最適の大学院である。そしていうまでもなく、大学の中は学歴社会なのである。取得できる学位である『修士(大学アドミニストレーション)Master in Higher Education Administration』もまことに聞こえがいい。

 この専攻は通学制のときからすでに社会人学生に門戸を開き、通信制の開設が人気に拍車をかけた。学ぶ内容同様、きわめて良好なアドミニストレーションが行なわれている。特に通信教育課程はコンペティターがおらず、ワンアンドオンリーの独走状態にある。

経営戦略の専門家を
大学が必要とする時代に

 さてここからは、大学が発信する情報には載らない部分である。実は昨今の大学サバイバル時代にあって、国公立問わず多くの大学が、この大学院が養成するような経営戦略の専門家を『教員』として採用する動きが目立っているのである。

 「産学推進センター教授」であったり、「教養部教授」であったりとその肩書きは様々だが、講義は一コマ程度かまったく持たず、研究に専念する教授と同様の扱いで、もっぱら経営戦略を立て、推進する役目である。理事会と教授会というツートップで運営されている多くの大学では、大学経営の専門家は事務方と教員の両方に必要なのである。

 この大学院で学ぶことで、多くの大学職員は「大学教員」、多くは准教授以上の公募に応募する権利を持つことになるだろう。このジャンルでの公募は、博士号でなく修士号で要件を満たすことが大半なのである。

 さてここからが、大学職員ならぬ一般ビジネスマンが考えるべきところである。たとえば、将来大学教授になりたいという志望を持っている場合、この修士号はキャリアに加えるのに相応しくないだろうか。

 更に言えば、『経営』の実務経験を元に非常勤をつとめる現職ビジネスマンの大学講師は結構いるが、そうした能力を、大学教授としての能力にコンバートするための資格兼学位を取得する機関として、この学校を考えていいのではないだろうか。

 繰り返すが、現在の「大学アドミニストレーター系」教授が担当しているような一コマの講義をする能力が有る人間ならば、この大学院に進むことで、最新の飛び道具を手にすることが出来るように見えるのである。

 ちなみに昨年までの入学者には私立大学の職員が大多数だが、それ以外の人間も必ず一定数いる。ある種の慧眼をもっているのならば、無視できない大学院である。

 学費も1年次が70万円とリーズナブル。集中して行なわれる東京でのスクーリングに出席できるか否かが、すんなり修了できるかの鍵となるだろう。

桜美林大学大学院大学アドミニストレーション研究科 
 大学アドミニストレーション専攻(修士課程)通信教育課程