原油価格の高騰により、世界中で代替エネルギーに注目が集まっている。総合商社の三井物産は米国企業などと、米国のオイルシェールの事業化調査に乗り出した。

 一般には聞きなれないオイルシェールという資源、じつはとんでもない潜在能力を持っている。

 オイルシェールはプランクトンや藻類の死骸が元となっている堆積物。掘り出して高温で処理すると、石油に近い油分などを産出できる。なにより驚きなのがその埋蔵量で、原油換算で2兆~3兆5000億バレル。ある試算では原油の約2分の1ともされる。

 現在、原油は中東など地政学的なリスクが高いエリアにあるOPEC加盟国に多くを頼っており、その依存度は今後50%に迫るともいわれている。オイルシェールは米国、ブラジル、ロシアなどに加えて、従来の産油国以外にも広く分布しているため、資源供給の地政学的リスクの回避にも役立つ。

 じつは20世紀中頃まではオイルシェールは現在の原油のように、広く利用されていた。戦時下には日本が中国の満州で採掘に取り組んだこともある。ところが、原油の採掘・精製技術が発達し低コストで効率的に大量生産できるようになると忘れ去られ、今では大規模な商業生産はされていない。

 日本でも、1970年代にオイルショックで石油価格が高騰すると、国家プロジェクトとしてオイルシェール生産プラント実験に取り組んだ。しかし、90年代に原油価格が暴落すると、オイルシェール採掘のメリットが消え、プロジェクトは終了してしまった。

 このように、オイルシェールの採掘は原油価格の上下に大きく影響されているが、原油価格の指標の一つであるニューヨーク市場での取引価格が1バレル当たり70ドルなら、コスト的に原油に対抗できるといわれている。

 一方で、原油採掘コストも上がっている。採掘が進んだ結果、深海などコストがかかる場所での採掘が増えているからだ。たとえば、メキシコ湾での採掘は取引価格が1バレル当たり60ドルでないと採算が取れないといわれており、オイルシェールとほとんど変わらない。

 現在、原油価格は1バレル120ドルを超えている。三井物産が調査を開始する鉱区では、条件が整えば2013年にも商業生産を開始する見込みだ。原油価格高騰が続けば、忘れ去られた資源が日の目を見るときがくるかもしれない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介)